スピーチ

皆さま
突然ですが、若本規夫という声優さんをご存知でしょうか?

声優オタクの僕が、最も尊敬する声優さんの一人で、
そう、サザエさんのアナゴさんの声をしている方です。
ドラゴンボールのセルの声とか、すべらない話のナレーターしてる人。

それを頭に入れてください…
そしてその方の声を想像しながらー、物語をお楽しみください。

そうしていただけましたら…
ただの馬鹿馬鹿しい物語が、
最高に馬鹿馬鹿しい物語へと成長を遂げることができるでしょう。

それでは喋っていただきましょう。
若本さんで、スピーチ。






「 この世の中にはー

守らなければならないマナーが三つあるー!



ひとーつ!タバコのマナー!

元来嗜好品であるそれを、小僧共が軽々しく手にするべきではなぁい!

てめぇらみたいな青い青いクソガキ共がー、
嗜好品と認識せずにプカプカと吸い散らかすことによりー、
大切に大切にその一本を楽しんでいる大人のー、自由な喫煙ゾーンが規制されてしまうのであぁる!

タバコの値段は即刻上げるべき!
タスポはブラックカードのごとく崇高なカードとし、小僧共の手の届かない存在とするべきである!!



ふたーつ! 乗り物のマナー!

貴様らぁ公共機関を使っているにも関わらずー、
まるで家のように振舞って何をしておるー!!
常に他人と生きていることを、人の中で生かされていることを今一度認識するべきであーる。

それでなお義務教育を終えたと社会にノコノコと顔を出す不届き者はー、
己の担任の教師と共にー、
今目の前でふらふらと立っているご老人に土下座しるおぉぉー!

相手を思いやれば思いやるほど損をするー、
そんな社会の縮図のような電車の中でー、
酒を飲み、豚まんを頬張り、ガキを走らせ、
「こけちゃダメよ!アッハッハッ!笑」などと談笑する貴様らぁ!
551のある時ーやってる場合じゃねぇ!
豚まんの匂いは車両をまたぐくらいに強烈なことに気づくべきであぁる!



みーっつ!それは、麻雀のマナー!!

貴様らぁ漫画の主人公気取ってんじゃなぁい!
現実に出来ないから漫画になってるんだろぉがぁ!
ペチペチと切ってんじやねぇ!
もっと初対面に怯えろい、もっと他の人がどう楽しんでいるかを見て学べぇい!

吾輩を見習うのだあぁー!



ぶるぁぁああああ!!

食らええぃぃ!



リーチぃいいぃぃ!! 」





若本さん、すいません。

リーチの発声に入るまで長すぎです。

もう帰ってください。

明日から来ないでください。

あと、それロンです。





ぶるぅあああぁぁぁぁ…!!
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必死に生きるということ

知られざる雀荘あるあるに

「サウナの傍にある雀荘は育つ」というのがあります。

というか、今作りました。
それくらいに雀荘の中でサウナの話を聞いたりします。
きっと雀荘好きな人はサウナも好きに違いない!

かくいう私もサウナの愛好者であり、もう超大好きです。

好きな理由は10%の変わった方々との出会いと…

90%の開放感!

これに尽きます。


先日、真っ昼間からサウナで開放感を満喫していた私。
サウナルームの中にはお昼のテレビ番組が流れており、
同時に自分も含めた立派なオッサンと呼ぶに相応しい5人が汗を流しておりました。

サウナで我慢比べなんて子供の遊び。
オッサン達は皆威風堂々とそれぞれのペースでそれぞれの時間を楽しみます。

ふとテレビに目をやると、自分達と同じくらいのオッサンがこう言いました。

「私には青春がありませんでした。」

昼のこんな時間帯に、それも突然ドキュメンタリーが始まったのでしょうか?

なにより自分たちと同年代のオッサンのその衝撃的な発言は、
サウナルームのオッサン達の意識をブラウン管へと釘付けにするには十分すぎる一言でした。

一瞬汗が止まったようにさえ感じました。


「私には青春がありませんでした。

母子家庭に生まれ、物心のついた頃から
貧しい家庭に迷惑をかけぬよう
毎日忙しく世話を焼いてくれる母を救えるよう
何よりも自分の生きている意味を感じられるようにと、
一心不乱に働きました。

天候、体調、周囲の人々、いかなる理由があろうとも、一日も休むことなく働き続けました。

何とも忙しい職場でした。
加えて、私を大切に育ててくれた母の体に限界が訪れます。
病床に伏した母を、大好きな母を自分が介護しようと決意したとき、

私には時間がなくなりました。

それは嫌なことではありませんでしたが、
人は、夢や大切なヒトやモノに身を委ねている時だけ
時間というものが流れる存在なんだと認識してしまいました。

先日母が他界しました。

そう。私の時間が止まってしまったのです。

今まで走り続けた自分の人生の歩みを止め、
ふと自分に残されたものに目を向けてみたんです。

何も残っていませんでした。

私が持っているのはお金だけでした。

独り身で、
母の介護をしながら、
休むことなく仕事に奔走していた私に残されたのは、お金だけだったのです。


人は、そのお金があれば何だってできると言うでしょう。

いやきっと、このお金があればきっと何だってできるのでしょう。

ですが、

私には、

今から恋愛をすることも
今から夢を追いかけることも

できないんです。

遅すぎるんです。
この歳になっては…

何もかもが遅すぎるんです…。」


テレビの中で感極まるオッサンに、

サウナにいる5人のオッサンは固まり、ぴくりとも動けなくなっていました。

全員が背筋を伸ばして、テレビを直視。
結構な時間サウナの中にいることも忘れ、誰もうごけなくなっていました。

テレビのオッサンに同じ気持ちを感じた者。
己の幸せさを知らしめられ、己の怠惰な生活に愕然としている者。
他人の人生の頑張りに対して…、ただただ賞賛を送る者。
そしてただならぬ切なさを感じられずにいる者。

そんなオッサン達でいっぱいになったサウナ。

オッサン達の体を流れる液体は
汗から涙に変わっていたかもしれません…。


そんな緊張感に包まれたサウナルームに

次の瞬間、

オバハン丸出しのアホ声がテレビから流れました。

「そんな岩田さんが人生を変える出会いをしましたー!☆彡

美味しい美味しい青汁です!」

「いやぁ、これを飲み始めてから調子が良くって…。
健康だけじゃなく、毎日元気で生きていこうって気になります。
気になる人もできましたしね(照)」

「そうなんです!
健康はもちろん、毎日のやる気もお手伝いするこの青汁☆

初回購入の方には1パック50袋入り、3800円でのご提供!

さらに…」


ただの青汁のコマーシャルでした。

当然サウナに居たオッサン達はゾロゾロとサウナを出ていきます。

一人はよほど裏切られた感があったのか、
小走りをしながら水風呂へダイブっ!

吹き上がる水しぶきが怒りで赤く染まっていました。
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魔法のパン

僕の友達の女の子が、
4月1日のエイプリルフールの朝に一人パンをほお張りながら、
大好きな彼に「どんなウソをついてやろうか」と考え込んでいました。

その考えは、
もう付き合って7年になろうかという男の
その甲斐性の無さ、
もしくは自分の気持ちを知っているであろうのに
全くそこには触れてこない思いやりの無さに対して、
苛立ちに限りなく近い感情を持つ彼女の
小さな小さな抵抗からくるものでありました。

そろそろ結婚がしたい。

『少し頼りなくて、麻雀ばっかりしている男だけど、
なんだかんだ優しくて、なにより呼吸の合うパートナー。
びっくりするくらいに隣にいて落ち着ける…
私が男の人の前でおならができるのはあなただけなのよ!』

なんて、思わずそんな逆プロポーズをしてしまいそうなくらいに好きな男。
なんとかエイプリルフールを使ってぎゃふんと言わせられないだろうか…

と、そんなことを思いながら食べているパンをちぎって口にほおりこもうとした

その時。

彼女の中で何かが閃きました。

これだ、と。

『私が食べているのは魔法のパンなのよ、きっと。
魔法のパンをもらったって彼にウソつこう!

二人の男女がパンを端を持って半分こ。
だけどその時願いごとをかけながらちぎるの。
大きい方のパンを持ってる人間の願いごとが叶う!

今からパンを焼いて…
少し切れ目を入れて…私の方が大きくちぎれるようにすれば…

それはもう婚約の契りとなるはずよ!

ウソから出たマコト!

彼ったら「しかたねぇなー…」とか言いながら、

ひょっとしてひょっとするかも!!キャー!!!!』

顔面真っ赤にしながらその場に転がるちょっと変な彼女。

ソッコーでパンを焼く女の子。
うまくちぎれるかを試すために何個もパンを焼く女の子。
彼が来るまでにもうお腹パンパンの女の子。

もうパンはしばらく見たくない。
そう思った矢先に彼はやってきました。

作戦決行です。

「あのね!昨日ね上司の奥さんに『魔法のパン』をもらったの!」

「んー?」

「なんか願い事をかけながら、二人でパンを半分こすると願いが叶うみたいなの!」

「すごいな。」

「ねぇー!さっそくやってみよー!!」

そう言って、もう何個作ったかわからない…どこに切れ目をいれたかもわからないパンを手に取り彼に差し出しました。


「願い事考えたー?いくよー?!」

「おう。」

そう言いながらパンをちぎると…


彼の方が大きいパンに。

彼女は「やってもうた!」感丸出しの顔面を引っさげたまま、
自分で決めたウソ設定にもかかわらず、まるで応用の効いてないセリフを吐きました。


「あー!大きいほうのパン持ってる人の願いが叶うらしいの、それ!
何お願いしたのー!!?」

正直、彼女の中に存在したのかもしれません。
淡い淡い期待が。
そう、彼の方から「お前と一緒に居たいと願ったよ」と言ってくれることを。

しかし、それはホントのホントに淡い期待で、
彼の口から出た願い事は

「いや…大きい方が欲しいって…」

という、ただのお腹を空かした子供のような願いごとでした。

そしたら彼女が一言。

「すごい!ホントに叶ってる!!」


…って、
おまえら二人ともアホすぎるし、早く結婚したらえーねん。

うるさいねん。
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桐谷 直

「店長ー!!ついに勝ち取ったぞー!」

―おぉ…、桐谷さんじゃないですか、いらっしゃいませ。そんなにいきり立ってどうしました。

「年末年始に大枚はたいて、嫁から許可を得たねん。麻雀は許すと!」

―なんと!それはそれは、ありがとうございます。どんなに高価なプレゼントをお送りしたんですかー?

「いや、高価つっても、全部店長から勝った分やから問題はないよ。」

―……。そういや年末僕も誰かさんに大枚をはたいたような忌まわしき記憶が蘇ってきました…。

「ただなぁー…。スゴい制約と誓約とを課せられたんや…。」

―それはそれは…。さぞかし大層な念能力を発揮できそうですね。

「そう。その能力が…ケルベロスや。」

―ケルベロス?なんという立派な名前を付けられたんですか!三首の犬でしょ?

「そう。犬。地獄の番犬。」

―あれですよ、犬は犬でも死を司る神ハデスのペットですよ。

「なるほど…死を司るのか。」

―そうっす。一体何なんですか?ケルベロスて…。

「これだよ。」

そう言うと、彼は自分の持っている携帯を取り出し、それを店長に向けました。

すると突然、その携帯が『カシャッ!!』とけたたましい音を立てます。

―なんなんですか?!これ。

「これがケルベロスや。今、写真を撮ったのは嫁。」

―えぇ?!

「携帯のアプリでなケルベロスってのがあって…こっちの位置情報はもちろんのこと、
その携帯を触らずして勝手に写メを撮れたり、音声を録音したりできるスグレモノ!」

―なんとー!スグレモノ過ぎますね。それを奥様に…

「そう。制約と誓約や。」

―てか…、それ、ウィルスみたいなもんですよね?なんという恐ろしいものを…

「シッ!!これ以上喋ると…あんたも消されるぜ。」

そう彼が店長に耳打ちすると、奥さんにメールを打ち始めました。

『今から、麻雀打つし、テキトーな時間になったら帰りますー。ちなみに、今写真撮ったのが店長さんな。』

ほどなくやってきた返事には、

『喋ってたんも店長さん?声高すぎるから女かと思った。先に寝てます。』

こっわー!!

―マジで声も聞かれてるじゃないですかー…

「せやろ。常に盗聴・盗撮されているみたいなもんや。」

―そんな恐ろしいものに手を出して…

「なんでこんなことになったか教えたげよっか?男はな…悪さしたらこうなるんだよ!」

―なるほど、勉強になります。しかし、こんなものに需要があるなんて…悲しい世の中ですね…。

「こんなものが必要になるくらいに、男が悲しい生き物なんだよ。」

―反省しました。男に生まれてきてゴメンなさい。

「ちなみに、今のiPhoneアプリの1位は何か知ってる?」

―え、知らないです。

「写メのカメラのシャッター音を無音にするアプリだよ。」

―世の中腐ってますね…。

「腐ってるね。」

と、その時、彼の携帯が再び鳴り響きました。
奥さんからの電話だったようです。

「なにー?」
「あんた女といるでしょ?声が女の声してる!」
「いや、店長やで。」
「ウソでしょ。証拠送りなさい。」

……。

「あ、店長ー。店長の声高すぎるから今日はあかんわ。次から喋らん方がいいかも。ほな、さいならー。」

―あ、桐谷さんー…。

そう、この声の高い店長こそが、
その店の番犬ケルベロスなのかもしれません。
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天野 浩二2

人間にはどーしても受け入れられないという相手がいます。

なぜだかわからないけれど、この人のここが気に入らないとか、なんかわからないけどこの人無理!みたいな人がいます。

皆さんにとって、彼のように『遺書』なんて言葉を軽々しく使うような男が嫌いであるように…
彼にとってのそれに当たるのが、「あいつ」だったわけです。


あいつとは彼がフリー雀荘で出会ったあるお客さん。
雀荘は、知らない人同士で勝負事をする場です。
とーぜんそのような因縁の感じざるを得ない場となりやすいです。他のどんな場所よりも。

そんな場所で出会ったあいつ。
最初は何とも思いませんでした。あいつが発声するまでは。

「ポンでーーす。」

彼にとってポンやロンに「です」をつけるのはあまり好きなものではありませんでした。
それがさらに「でーーす」であったとするなれば、その好きじゃないメーターも大きく振り切れ、
もはや、この人とは前世で何か問題があったんじゃないだとろうかと疑うとこまでやってきます。

「チーでーーす」

「ロンでーーす」

「ポンでーーす」

「ロンでーーす」

「チーでーーす」

「チーでーーす」

「ロンでーーす」

ほんでこの男、すこぶる強いんです!
さらに全然ツモらないから、毎局「ロンでーーす」が聞けちゃうというオマケ付き。

そんな男にコテンパンにやられた彼は、その日のうちに自分の遺書に『あいつをやっつける』と書き込み、
その対策までも練っていたのでした。

歯医者の予定が先送りとなってしまった今日。
彼がするべきことは『あいつをやっつける』ことです。

彼は意気揚々と雀荘へ向かいました。

男がいました。

彼が街席にいるときにも
「ロンでーーす」と、その声は響いています。

すぐに同卓となり、決戦の火蓋が切って落とされます。

先制パンチをかましたのは、男の方。
今日も華麗に
「ポンでーーす」
「ロンでーーす」とサクっとアガってきます。強い。

しかし、今日の彼は違いました。
チャンスを伺い、その時が来るまではじっと我慢。
今日は準備している作戦があるためか、ニヤリとほくそ笑む余裕までもが彼にはありました。

そしてその時が来ました!

配牌からあれよあれよと5巡目にイーシャンテン。
隠れドラ3の役牌ポンテンの、攻撃力もある絶好の形。
彼はこの時を待っていました。

他家が、彼の鳴ける牌の『白』を切りました。
しかし、彼はなぜかそれをスルー。
そして、それに合わせ打つかのように…
男が『白』を切り出した時に…

彼が言いました。


「ポンどぇーーす」


こいつめっちゃウザい!
少しアレンジを加えての発声に、周りは少しざわつきます。

彼は、
『よし、これで後はこの男からアガった時にだけロンでーーすの発声をすれば完勝や。
早く出しやがれ、このオレの3-6ソウを!!』

と、思いながら、テンパイを取るための『二萬』を切りました。

「ロンでーーす」

勝負あったぁー!!

男のダマのイーペーコーのみにぶっ刺さった彼は、
なぜかその瞬間立ち上がり、
男に握手を求めていました。

男同士の熱い握手が交わされ、彼は元気よく「ラス半です!」とお店の人に伝えました。


彼は帰ってすぐに、遺書にある『あいつをやっつける』という項目に取り消し線を入れ、
その横に「敵わない」とメモをして、
そっとノートを閉じました。
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