望月 雅継の麻雀コラム
2012年03月19日(月)
| 望月 雅継
鳳凰位決定戦その2
鳳凰位決定戦を一週間後に控えた私は、対局不足による感覚のズレを戻すために急遽予定になかったセットを組むことにしました。
周りの方々の協力もあって、二日間でAルールを13半荘。
これでも全然足りないのかも知れませんが、それでも少しずつ感覚を取り戻す私。
前掛かりになる回数は減り、きちんと攻撃を受け止めた上で戦いが出来るようになってきました。とはいっても、状態が回復するまでにはまだまだかかりそうな気配。やはり後手を踏む回数が多いことは気になるところです。
実は鳳凰位決定戦を迎えるに当たり、いくつかのゲームプランを考えていました。
以前から、対局に臨む準備とゲームプランが勝敗の分かれ目だと考えている私にとって、この作業は本当に大事なモノなのです。
自分が頭に立って逃げる展開、好位置につけ首位争いする展開、後方から好機を覗う展開、そして最後方から追い上げる展開。いろいろな展開が考えられます。
これには、対戦相手の打ち筋やタイプ、思考を考えることがとても必要な事です。
三人共に対戦回数は少なくありませんから、十分にスタイルや長所を理解しているつもりです。
まずは瀬戸熊鳳凰位。
瀬戸熊プロの強さは、昨年の鳳凰位決定戦を三日間間近で観戦したこともあり、本当によくわかっています。プロ入り当初から背中を追いかけてきた憧れの存在でもありますから、瀬戸熊プロの牌譜は穴が開くほど何回も見返しています。
圧倒的な爆発力にどうしても目が行きがちですが、実は競り合いに非常に強く、捌きやディフェンス力も抜群。大きく連を外すようなタイプでないだけに、昨年のように先行されたらかなりの確率で逃げ切ることでしょう。
とすれば、私が瀬戸熊プロに対して一番気を付けるべき点は、大逃げを打たせないこと。
恐らく他の二人も同じような事を考えて対局するため、序盤は瀬戸熊プロをマークするような展開が続く事でしょう。
出来れば瀬戸熊プロよりもポイントを持って対局を進める事。もしそれが出来ないようでも、瀬戸熊プロにポイントを持たせないようにゲームを進める事。これが対瀬戸熊プロへの対策の一つです。(本当はもっとたくさんあるのですが…とりあえず一番大切な事はこれです。)
続いては荒プロ。
『生きる伝説』と言われるだけあって、荒プロの強さと安定感は群を抜いています。
それでも、A1リーグに昇級してから多くの対戦をさせてもらっている為、荒プロの打ち筋はかなり研究しているつもりです。
しかし、気になる点がいくつかあるのです。
一つは、鳳凰位決定戦前に、『魅せる麻雀』を公言していること。
そして、今回のA1リーグで首位に立ってからの麻雀に変化を感じる事。
もちろん強いことは十分に承知していますが、最終節に感じた荒プロの強さは、今まで荒プロから感じたそれとは違ったものでした。もし荒プロのスタイルが、私が考えている荒プロの麻雀から変化があるようならば、対局の最中に対応に追われることになるでしょう。
瀬戸熊プロに対しての準備とは異なり、実は荒プロに対しては底知れぬ恐怖感を感じていたのです。今となって思い返してみると、それは荒プロに対してキチンとした対策が十分に取れていないということだったのかも知れません。
最後は右田プロ。
伊藤プロ、石渡プロとの争いを制して最後の椅子に滑り込んだ右田プロが、一番勢いがあることは間違いありません。先手争いに積極的に参加してくる右田プロのスタイルは、実は私にとって一番不利になる戦い方。
地に足をつけて相手の攻撃を受け止め、そして攻勢に転じようと目論む私と、先手を取り相手の攻撃をいなす右田プロとは、対局に対しての狙いが大きく異なるため、右田プロが好調を維持する時は必ず自分が劣勢に立たされるということです。そして右田プロは非常にディフェンス力が高いことでも知られています。私が素点でポイントを稼ぐタイプなのに対し、右田プロは順位点に重きを置いています。ラスを引かない右田プロがいるということは、着順争いがかなり熾烈になることが予想されます。スタイル的に、小場で進行して一番苦しいのは自分。なるべくなら右田プロのペースにならないように対局を進める必要があるのです。
ここまでの対戦相手の分析を基にすると、各人のスタイルと自分の求めるゲーム展開が大きく異なることに気が付きます。
全てを求める事は困難ですから、自分が一番大事だと考えることを優先しなければなりません。
自分が今回の鳳凰位決定戦で選んだものは何か?
それは自分らしく在ること。
『美しく魅せて勝つ』
私がサインを求められたときに好んで良く書く言葉です。
自分の良さは打点力。今回の鳳凰位決定戦は初のニコニコ生放送での対局になりますから、自分の麻雀を多くの皆さんに見て頂ける大チャンスなのです。
勝つことに拘りたいとも思いますが、それ以上に自分らしく在ることに重きを置こうと決めたのです。
自分の決めたスタイルと相手との相性は最悪です。
前捌きを狙う右田プロに、それに乗りやすい荒プロ。
大きく分類すると私と同系ですが、自分よりも対応力が格段に上の瀬戸熊プロ。
三人共に私の出遅れが一番望ましいわけですから、私の持ち味を消すような序盤戦になることが予想されるでしょう。
棘の道になりますが、そう決めた以上は自分の決めたスタイルで戦うだけ。
自分にとって辛く苦しい道程だとしても、その道を進むしかないのです。
そう考えた私は、自分のスタイルを十分に生かしたゲームプランを何通りも模索します。
しかし…
何回考えても自分が勝つパターンは一つだけ。
他の選手が優勝するパターンは何度も思いつくのに、自分が勝てるパターンは思い描くことが出来ないのです。
それは、終盤まで粘り込んでの最後の直線勝負。
自分の追い足がどこまで届くかはわかりませんが、この強敵を負かす為にはそれしか思いつかないのです。
それでも、この作戦がうまく嵌るとは全く思いません。
リーグ戦同様、我慢する戦いを選んだのですから、後は自分らしく戦うだけです。
実はもう一つ作戦があったのですが…これは今回使う場面がなかったのでまたいつかお話ししたいと思います。
地元での調整が終わり、後は東京に乗り込むだけです。
麻雀の調子はまだまだですが、それでも気持ちは十分に乗ってきました。
後は半荘20回、自分らしく戦うだけ。
気持ちの整理がついた私は、東京へ向かう身支度を始めたのでした。
~次回へ~
周りの方々の協力もあって、二日間でAルールを13半荘。
これでも全然足りないのかも知れませんが、それでも少しずつ感覚を取り戻す私。
前掛かりになる回数は減り、きちんと攻撃を受け止めた上で戦いが出来るようになってきました。とはいっても、状態が回復するまでにはまだまだかかりそうな気配。やはり後手を踏む回数が多いことは気になるところです。
実は鳳凰位決定戦を迎えるに当たり、いくつかのゲームプランを考えていました。
以前から、対局に臨む準備とゲームプランが勝敗の分かれ目だと考えている私にとって、この作業は本当に大事なモノなのです。
自分が頭に立って逃げる展開、好位置につけ首位争いする展開、後方から好機を覗う展開、そして最後方から追い上げる展開。いろいろな展開が考えられます。
これには、対戦相手の打ち筋やタイプ、思考を考えることがとても必要な事です。
三人共に対戦回数は少なくありませんから、十分にスタイルや長所を理解しているつもりです。
まずは瀬戸熊鳳凰位。
瀬戸熊プロの強さは、昨年の鳳凰位決定戦を三日間間近で観戦したこともあり、本当によくわかっています。プロ入り当初から背中を追いかけてきた憧れの存在でもありますから、瀬戸熊プロの牌譜は穴が開くほど何回も見返しています。
圧倒的な爆発力にどうしても目が行きがちですが、実は競り合いに非常に強く、捌きやディフェンス力も抜群。大きく連を外すようなタイプでないだけに、昨年のように先行されたらかなりの確率で逃げ切ることでしょう。
とすれば、私が瀬戸熊プロに対して一番気を付けるべき点は、大逃げを打たせないこと。
恐らく他の二人も同じような事を考えて対局するため、序盤は瀬戸熊プロをマークするような展開が続く事でしょう。
出来れば瀬戸熊プロよりもポイントを持って対局を進める事。もしそれが出来ないようでも、瀬戸熊プロにポイントを持たせないようにゲームを進める事。これが対瀬戸熊プロへの対策の一つです。(本当はもっとたくさんあるのですが…とりあえず一番大切な事はこれです。)
続いては荒プロ。
『生きる伝説』と言われるだけあって、荒プロの強さと安定感は群を抜いています。
それでも、A1リーグに昇級してから多くの対戦をさせてもらっている為、荒プロの打ち筋はかなり研究しているつもりです。
しかし、気になる点がいくつかあるのです。
一つは、鳳凰位決定戦前に、『魅せる麻雀』を公言していること。
そして、今回のA1リーグで首位に立ってからの麻雀に変化を感じる事。
もちろん強いことは十分に承知していますが、最終節に感じた荒プロの強さは、今まで荒プロから感じたそれとは違ったものでした。もし荒プロのスタイルが、私が考えている荒プロの麻雀から変化があるようならば、対局の最中に対応に追われることになるでしょう。
瀬戸熊プロに対しての準備とは異なり、実は荒プロに対しては底知れぬ恐怖感を感じていたのです。今となって思い返してみると、それは荒プロに対してキチンとした対策が十分に取れていないということだったのかも知れません。
最後は右田プロ。
伊藤プロ、石渡プロとの争いを制して最後の椅子に滑り込んだ右田プロが、一番勢いがあることは間違いありません。先手争いに積極的に参加してくる右田プロのスタイルは、実は私にとって一番不利になる戦い方。
地に足をつけて相手の攻撃を受け止め、そして攻勢に転じようと目論む私と、先手を取り相手の攻撃をいなす右田プロとは、対局に対しての狙いが大きく異なるため、右田プロが好調を維持する時は必ず自分が劣勢に立たされるということです。そして右田プロは非常にディフェンス力が高いことでも知られています。私が素点でポイントを稼ぐタイプなのに対し、右田プロは順位点に重きを置いています。ラスを引かない右田プロがいるということは、着順争いがかなり熾烈になることが予想されます。スタイル的に、小場で進行して一番苦しいのは自分。なるべくなら右田プロのペースにならないように対局を進める必要があるのです。
ここまでの対戦相手の分析を基にすると、各人のスタイルと自分の求めるゲーム展開が大きく異なることに気が付きます。
全てを求める事は困難ですから、自分が一番大事だと考えることを優先しなければなりません。
自分が今回の鳳凰位決定戦で選んだものは何か?
それは自分らしく在ること。
『美しく魅せて勝つ』
私がサインを求められたときに好んで良く書く言葉です。
自分の良さは打点力。今回の鳳凰位決定戦は初のニコニコ生放送での対局になりますから、自分の麻雀を多くの皆さんに見て頂ける大チャンスなのです。
勝つことに拘りたいとも思いますが、それ以上に自分らしく在ることに重きを置こうと決めたのです。
自分の決めたスタイルと相手との相性は最悪です。
前捌きを狙う右田プロに、それに乗りやすい荒プロ。
大きく分類すると私と同系ですが、自分よりも対応力が格段に上の瀬戸熊プロ。
三人共に私の出遅れが一番望ましいわけですから、私の持ち味を消すような序盤戦になることが予想されるでしょう。
棘の道になりますが、そう決めた以上は自分の決めたスタイルで戦うだけ。
自分にとって辛く苦しい道程だとしても、その道を進むしかないのです。
そう考えた私は、自分のスタイルを十分に生かしたゲームプランを何通りも模索します。
しかし…
何回考えても自分が勝つパターンは一つだけ。
他の選手が優勝するパターンは何度も思いつくのに、自分が勝てるパターンは思い描くことが出来ないのです。
それは、終盤まで粘り込んでの最後の直線勝負。
自分の追い足がどこまで届くかはわかりませんが、この強敵を負かす為にはそれしか思いつかないのです。
それでも、この作戦がうまく嵌るとは全く思いません。
リーグ戦同様、我慢する戦いを選んだのですから、後は自分らしく戦うだけです。
実はもう一つ作戦があったのですが…これは今回使う場面がなかったのでまたいつかお話ししたいと思います。
地元での調整が終わり、後は東京に乗り込むだけです。
麻雀の調子はまだまだですが、それでも気持ちは十分に乗ってきました。
後は半荘20回、自分らしく戦うだけ。
気持ちの整理がついた私は、東京へ向かう身支度を始めたのでした。
~次回へ~