望月 雅継の麻雀コラム
2012年04月27日(金)
| 望月 雅継
鳳凰位決定戦その4
地元での調整を終えた私は、決定戦二日前に東京へ向かいました。
いつものように大きなキャリーバックを引きずりながら向かった先は池袋。
慣れない街に戸惑いながらも、宿泊先のホテルに到着しました。
ホテルの部屋は角部屋で十分な広さがあり、ここでの生活は問題なさそうに感じます。
後は、十分な睡眠が取れるかどうかと、会場までのアクセス方法と時間を調べることができれば恐らく問題ないでしょう。
池袋に着いて早々に、以前お世話になった方との会食へ。
鳳凰位決定戦への意気込みや戦いのプランを語りながら、楽しい時間を過ごした後は、同じプロ連盟の山口プロと静岡支部の石原プロと飲み直し。
夢を描いて東京へ飛び出していった石原プロの話を中心に、夜遅くまで盛り上がったのでした。
一夜明けて翌朝。
目覚ましもかけずにゆっくりと睡眠を取った私は、ホテルの目の前にある某ハンバーガーチェーン店に向かいました。
普段と同じメニューを頼むと、ホテルの部屋まで持ち帰り、新聞でも読みながら遅めのブランチを…と考えていたのですが、食事が全く喉を通りません。
「あれ…昨日飲みすぎたのかな?」
そんなことを考えながらも、その瞬間はあまり深く考えずに日中はホテルの部屋でのんびり過ごすと、夜は友人と久しぶりの再会。
対局前に充実した時間を過ごすことができた私は、これで対局に集中できるはずだと、早めに床に入ります。
しかし…何やら部屋の外が騒がしいのです。
聞こえて来る声は日本語ではありません。
どうやら隣は外国人が宿泊しているみたいです。
その外国人たちが数部屋に渡り友人たちと共に宿泊しているようなのです。
そして、それぞれの部屋を談笑しながら行き来しているように感じます。
明日は大事な鳳凰位決定戦。睡眠は何より大事です。
部屋を出て注意しようかすごく悩みました。しかし、こんなところで心を荒立てるのも明日に悪影響を及ぼしそうですし…
波立つ心を何とか抑えながら横になるのですが、声が気になってやっぱりなかなか眠りにつくことができません。
何度も目が覚めながらウトウトするものの、熟睡までには至りませんでした。
気がつくとアラーム音が部屋に鳴り響きます。
キチンとした睡眠が取れぬまま、決戦の朝を迎えていたのです。
睡眠不足の為か、なかなか目が覚めない自分に喝を入れようと、少し長めのお風呂に浸かります。
ここまで頭の中で積み重ねてきたゲームプランを再確認し、自分の中での決め事を心の中で反復して湯船を出ると、火照った体を冷ます為にも昨日と同じハンバーガーショップに向かいます。
普段の対局の前のルーティーンとして、私は朝食にはご飯と卵を食べるということを決めています。全く根拠はないのですが、戦いの前にキチンと炭水化物を摂るということは勝負者としては必須ですよね。卵を食べるのは単にゲン担ぎですけど…。
しかし、今回の戦いはホテル暮らし。普段のような食生活を送ることはできません。
少しでも慣れた食事を摂ろうと、いくつかの選択肢の中から大好きなハンバーガーショップを選んだのですが…
何とこの日も食事が喉を通りません。
緊張の為に胃が小さくなっているのか、それとも単に食が細くなっているのか、とにかく全く食欲がないのです。
それでも半荘5回戦を乗り切るためには食べないわけにはいかないのですから、無理やりスープだけを口にして店を出た私。
睡眠不足と食欲不振といったマイナス要因ばかりで不安要素だらけですが、対局はもう直前に迫っています。
ホテルに戻り勝負服に着替え、いざ決戦の舞台へ向かいます。
会場となるスタジオの場所は前日までに確認済みでしたので、高まる気持ちを抑えながら会場へと歩を進めます。
今まで経験した決勝戦では、この段階でもう十分に心が出来上がっている状態で対局に向かっているのですが、今回の鳳凰位決定戦においてはどうも様子が違うのです。
4年ぶりの決定戦に気持ちが高揚しているのか、憧れの荒プロと瀬戸熊プロとの対戦に緊張しているのか、はたまた自身の調整不足に不安を感じているのか、何が原因かはわかりませんが、とにかく心が落ち着かないのです。
会場に入り、スタッフの皆さんに挨拶を済ませると、自らの集中を高める時間に入ります。
対局者それぞれが思い思いのスタイルで集中している姿を、私はとても客観的な視点で見つめていたことを鮮明に思い出します。
それは、今思い返せば、まだこの時点では対局を迎える事に対して集中しきれていなかったということなのかもしれません。
鳳凰位決定戦の開幕の瞬間を、私は選手としてもスタッフとしても十分に経験しているつもりでいましたが、今回はニコ生での生放送。
選手もスタッフも普段とは全く勝手が違います。張りつめた空気であることは間違いないのですが、まだこの雰囲気を自分のモノにすることは出来ていなかったのかもしれませんね。
そしてさらに、私が最も恐れていた事態が起こってしまいました。
私は対局前に緊張をしている時、突然腹痛が襲うことがあるのです。今回がまさにそれ。急遽、薬を服用しトイレに駆け込みます。
こういった姿を、対戦相手に見せるわけにはいきません。
平静を装って対局室に入り、場所決めをした後、放送の打ち合わせに入ります。
不安要素ばかりが目につきますが、もう対局開始は目の前まで来ています。
ここまでくれば腹を括って対局に臨むしかありません。
対局前のインタビューを終え、着座した私は南家スタート。
ここから、私の鳳凰位決定戦が始まったのです。
~続く~
いつものように大きなキャリーバックを引きずりながら向かった先は池袋。
慣れない街に戸惑いながらも、宿泊先のホテルに到着しました。
ホテルの部屋は角部屋で十分な広さがあり、ここでの生活は問題なさそうに感じます。
後は、十分な睡眠が取れるかどうかと、会場までのアクセス方法と時間を調べることができれば恐らく問題ないでしょう。
池袋に着いて早々に、以前お世話になった方との会食へ。
鳳凰位決定戦への意気込みや戦いのプランを語りながら、楽しい時間を過ごした後は、同じプロ連盟の山口プロと静岡支部の石原プロと飲み直し。
夢を描いて東京へ飛び出していった石原プロの話を中心に、夜遅くまで盛り上がったのでした。
一夜明けて翌朝。
目覚ましもかけずにゆっくりと睡眠を取った私は、ホテルの目の前にある某ハンバーガーチェーン店に向かいました。
普段と同じメニューを頼むと、ホテルの部屋まで持ち帰り、新聞でも読みながら遅めのブランチを…と考えていたのですが、食事が全く喉を通りません。
「あれ…昨日飲みすぎたのかな?」
そんなことを考えながらも、その瞬間はあまり深く考えずに日中はホテルの部屋でのんびり過ごすと、夜は友人と久しぶりの再会。
対局前に充実した時間を過ごすことができた私は、これで対局に集中できるはずだと、早めに床に入ります。
しかし…何やら部屋の外が騒がしいのです。
聞こえて来る声は日本語ではありません。
どうやら隣は外国人が宿泊しているみたいです。
その外国人たちが数部屋に渡り友人たちと共に宿泊しているようなのです。
そして、それぞれの部屋を談笑しながら行き来しているように感じます。
明日は大事な鳳凰位決定戦。睡眠は何より大事です。
部屋を出て注意しようかすごく悩みました。しかし、こんなところで心を荒立てるのも明日に悪影響を及ぼしそうですし…
波立つ心を何とか抑えながら横になるのですが、声が気になってやっぱりなかなか眠りにつくことができません。
何度も目が覚めながらウトウトするものの、熟睡までには至りませんでした。
気がつくとアラーム音が部屋に鳴り響きます。
キチンとした睡眠が取れぬまま、決戦の朝を迎えていたのです。
睡眠不足の為か、なかなか目が覚めない自分に喝を入れようと、少し長めのお風呂に浸かります。
ここまで頭の中で積み重ねてきたゲームプランを再確認し、自分の中での決め事を心の中で反復して湯船を出ると、火照った体を冷ます為にも昨日と同じハンバーガーショップに向かいます。
普段の対局の前のルーティーンとして、私は朝食にはご飯と卵を食べるということを決めています。全く根拠はないのですが、戦いの前にキチンと炭水化物を摂るということは勝負者としては必須ですよね。卵を食べるのは単にゲン担ぎですけど…。
しかし、今回の戦いはホテル暮らし。普段のような食生活を送ることはできません。
少しでも慣れた食事を摂ろうと、いくつかの選択肢の中から大好きなハンバーガーショップを選んだのですが…
何とこの日も食事が喉を通りません。
緊張の為に胃が小さくなっているのか、それとも単に食が細くなっているのか、とにかく全く食欲がないのです。
それでも半荘5回戦を乗り切るためには食べないわけにはいかないのですから、無理やりスープだけを口にして店を出た私。
睡眠不足と食欲不振といったマイナス要因ばかりで不安要素だらけですが、対局はもう直前に迫っています。
ホテルに戻り勝負服に着替え、いざ決戦の舞台へ向かいます。
会場となるスタジオの場所は前日までに確認済みでしたので、高まる気持ちを抑えながら会場へと歩を進めます。
今まで経験した決勝戦では、この段階でもう十分に心が出来上がっている状態で対局に向かっているのですが、今回の鳳凰位決定戦においてはどうも様子が違うのです。
4年ぶりの決定戦に気持ちが高揚しているのか、憧れの荒プロと瀬戸熊プロとの対戦に緊張しているのか、はたまた自身の調整不足に不安を感じているのか、何が原因かはわかりませんが、とにかく心が落ち着かないのです。
会場に入り、スタッフの皆さんに挨拶を済ませると、自らの集中を高める時間に入ります。
対局者それぞれが思い思いのスタイルで集中している姿を、私はとても客観的な視点で見つめていたことを鮮明に思い出します。
それは、今思い返せば、まだこの時点では対局を迎える事に対して集中しきれていなかったということなのかもしれません。
鳳凰位決定戦の開幕の瞬間を、私は選手としてもスタッフとしても十分に経験しているつもりでいましたが、今回はニコ生での生放送。
選手もスタッフも普段とは全く勝手が違います。張りつめた空気であることは間違いないのですが、まだこの雰囲気を自分のモノにすることは出来ていなかったのかもしれませんね。
そしてさらに、私が最も恐れていた事態が起こってしまいました。
私は対局前に緊張をしている時、突然腹痛が襲うことがあるのです。今回がまさにそれ。急遽、薬を服用しトイレに駆け込みます。
こういった姿を、対戦相手に見せるわけにはいきません。
平静を装って対局室に入り、場所決めをした後、放送の打ち合わせに入ります。
不安要素ばかりが目につきますが、もう対局開始は目の前まで来ています。
ここまでくれば腹を括って対局に臨むしかありません。
対局前のインタビューを終え、着座した私は南家スタート。
ここから、私の鳳凰位決定戦が始まったのです。
~続く~