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望月 雅継の麻雀コラム

2012年08月02日(木)

鳳凰位決定戦その7

※対局の内容に触れていきますが、読まれる方は日本プロ麻雀連盟が発売している
『牌譜データサービス』にて鳳凰位決定戦の牌譜を並行してご覧になると、
より内容がわかりやすいかと思われます。興味のある方はぜひご購入ください。



鳳凰位決定戦が終わってから、自分なりに敗因を考えてみました。
なかなか自分の中で消化できない敗戦の現実。

「何が悪かったのか?」

「自分が足りないモノはなんだったのか?」

考えても考えても、自分が思い通りの力が発揮されなかった事しか頭の中には浮かびません。


しかし、この4回戦、5回戦を振り返り、自分が犯した大きなミスや、目に見えないけれど考え直さなければいけない小さなミスが多く見つかりました。
そんな私のいけなかった部分を中心に振り返ってみたいと思います。


4回戦東2局1本場、荒プロがホンイツに向かい8をポン。
対する私は三色ならずのポンカスのカン8のテンパイ。


七八九79①②③⑥⑦⑧中中 


テンパイですが、テンパイとはとても言えないこの形で、親の荒プロに勝負を挑んでしまいます。結果、荒プロに5200の放銃。

この放銃に関しては、賛否両論あるのだと思います。
型が入っていない以上勝負すべきではないですし、勝てる保証は全くありません。
このようなアガリを拾った荒プロにとっては願ってもない展開になりますし、
この決定戦自体での荒プロに対しての押し引きが変わってしまいますから。


続く東3局、右田プロがツモ三色ドラ1の2000、3900をツモアガリます。
しかし、この局も私に疑問手順が生じます。

11巡目、


六七八11233678⑥⑧ ドラ6


この形にツモ5。自然に打3とすればいいものを、この5をツモ切り。一盃口の保険を掛けたい打牌は、中途半端な意思を感じます。
すると、次巡ツモはドラの6。もちろんここで打3でもいいのですが、前巡打5としているだけにこの6もツモ切ります。
すると、この6を荒プロがチー。
そして次巡の荒プロのツモがさらに6。

どのタイミングでも打3さえ打てれば、私の手は、


六七八12366678⑥⑧ ドラ6


となっており、このカン⑦で満貫のテンパイ。私の事ですからリーチを宣言するかも知れません。
しかし現実は荒プロの仕掛けで右田プロにテンパイが入った上に、右田プロのツモアガリ。
前局の目に見える大きなミスと、目には見えない小さなミスが混同しているようでは、この厳しい鳳凰位決定戦は戦えません。

さらに東4局1本場、結果は瀬戸熊プロと私の二人テンパイでの流局なのですが、ここでも微妙な手順が発生します。

7巡目、


五六七七七八九12235⑥ ツモ⑤


この牌姿から私は打七。カン4の受けの強さと、将来的な危険牌の処理を考えての事ですが…
それでもここは打2と自然に打つべきです。
自分のミスから見えない敵に脅えているように今となっては感じてしまいます。ここでも手順ミスで瀬戸熊プロのリーチを受け撤退。
終盤テンパイにこぎつけるものの、アガリ逃しの後では意味が全く違います。


この後、南1局に2000、3900をツモアガリ、何とか原点復帰を果たし終盤に縺れる展開を演出するも、オーラスに瀬戸熊プロに清一色の2000、4000を引かれ結局瀬戸熊プロのAトップ。
この局にも私に難解な瞬間が訪れています。


私の4巡目、

三四五1233446①⑤⑧ ツモ8 ドラ6


ここから私は打⑧。一見すると自然な手順に思えます。
しかし、この局はアガリトップ。テーマはアガルことであり、受けの強さや手を組むことではありません。
③を引いてのリャンカンから三色への手順を残す事より、タンヤオへの動きを主とした縦引きによる雀頭探しに意識が入っていれば、打①も十分候補に挙がります。

ここで打⑧としたあと、次巡打①となってこの①を瀬戸熊プロがポン。
前巡の瀬戸熊プロの牌姿が、


二二四①①④⑥⑦⑧⑨⑨西R ドラ6


この形ではなかなか①に声が掛けづらいのですが、次巡ツモ④で、


二二①①④④⑥⑦⑧⑨⑨西R 


これなら①にはポンの声が掛けやすい牌姿になっています。この微妙な違いわかりますか?

この⑧と①の手順前後が勝負のアヤになっているのですから麻雀は難しいものです。
通常手順と応用手順。それを状況に合わせて変化させていくのが私の持ち味なのに、
状況に合ってない打牌選択を繰り返してしまっている。
それが鳳凰位決定戦の舞台の怖さなのかも知れません。

瀬戸熊プロの最終牌姿が、


②④④④⑥⑦⑧ ポン⑨⑨⑨ ポン①①① ツモ② ドラ6


この最終形を見れば、4巡目の私の打⑧が勝敗を分けたことがおわかりになるでしょう。
その瞬間にはわかりにくい微妙な勝負勘のズレが、最後まで私を苦しめるとはこの段階では全くわかりませんでした。



気持ちを切り替えて臨んだ初日最終戦の5回戦、荒プロの1300、2600からスタートします。
続く東1局1本場、私の親番で荒プロから6巡目にリーチが入ります。ここに右田プロが打T。その時の私の牌姿が、


七八1789①②⑦⑧TT西 ドラ8


狙いはチャンタ三色。もちろん本心は門前で勝負を懸けるのが理想ですが、この半荘も先手を取り、
そしてトータルトップの荒プロのリーチを受けての判断なのですから悩むところです。

リーグ戦での私の選択はこのTは100%スルーです。
戦う必要がないですからね。荒プロのリーチを当然評価していますから。
しかし、大きく点差の離れた今の状態では、その選択が正解とも思いません。
実際の私もこのTをスルーしたのですが、仮にこのTを仕掛けた場合、
ツモ②打1、ツモ九打①、ツモ⑨で2000オールの先決着。
荒プロに対しぶつかっていく気持ちがあれば結果も違ったものだと思います。

この点が、私と瀬戸熊プロ、右田プロとのメンタリティーの差だったのではないでしょうか。

結果は瀬戸熊→荒への5200の放銃で終わりますが、この局に関してはもう少し戦っていく意識があっても良かったのではないかと思っています。


しかし、そんな私でも勝負を挑む瞬間もあるのですよ。
東3局1本場、右田プロからの7巡目リーチを受けた私の12巡目、


三五134457778③⑤ ドラ4


この牌姿から右田プロの切った四をチーして打8。
ツモ⑦打1、ツモ5打⑦、ここに右田プロがドラの4をツモ切り、この4をチーして打5。
そしてツモ④


44777③⑤ チー435 チー四三五 ツモ④ ドラ4


右田プロの待ちがまだ山に3枚も生きていましたから、このアガリは価値のあるアガリだと言えるでしょう。
この結果でまだまだ戦える…と思った矢先、私に大きな落とし穴が待っていたのです。


東4局2本場、6巡目の荒プロと右田プロの仕掛けを受けた私の手牌が、


五七345②②②④⑦⑦TT ドラ⑦


このドラが二枚のイーシャンテンにツモ⑤。
フラットな状況ならTのトイツ落としを掛けたいところですが、荒プロ、右田プロの仕掛けに対しTが打ちづらい所。

そこで私は打七。西のツモ切りを挟んだ後に生牌のRを引き打五。この五が右田プロに放銃となるのです。

点数は2000点ですが、この放銃は拙い放銃です。
二人の仕掛けに対し、Tを切らないのであればマンズの切り順は五→七でなければならないはず。
仮に手牌の膨らみを期待し、最終的にTを勝負するのであっても、ツモ西で打五と瞬間は受けに転じなければならないのです。
4回戦同様、一枚の牌の後先が大きく結果を左右するのです。


この結果で気を良くしたのは右田プロ。
南1局、私のリーチを掻い潜り、私から5800をアガると、次局は2600オール。一気に加点し抜け出します。

逆に私はというとやはり先程の放銃が尾を引いているのか、牌勢も気持ちも失速気味。
南1局、荒プロが3巡目自風の北ポン、そして4巡目にはテンパイでこの形。


44499⑦⑧⑨RR ポン北北北 


しかし6巡目ツモ⑦でなんと打⑧。
テンパイを外しトイトイへ変化させるのです。
私の手牌には既にRがありましたが、ダブNを叩いて私も荒プロに戦いを挑みます。
しかし状態はどう考えても荒プロが上。9巡目9を暗刻にし再度テンパイを果たすと、ドラを引き入れテンパイとなった私が荒プロにRを放銃。
荒プロにとっては大きな、私にとっては本当に痛い8000となったのです。


この半荘を制し初日をプラスで終えるつもりの私にとって、この放銃は本当に大きなダメージとなりました。続く私の親番でも、


四五六七八5567④④⑥⑦ 


この三色の好形イーシャンテンにもツモ⑤。
平時の私なら打八として再度三色を目指すのですが、今置かれている状態では三色は成就しないと考え、打5でリーチを宣言します。


「何であのリーチを打ったんですか?望月さんらしくないじゃないですか?」

とは、鳳凰位決定戦終了後の吉田直プロの言葉。
この直後、実況の滝沢プロからも同様の質問をされました。

自分の置かれている状態を踏まえ、最善の策を打つことが私の持ち味の一つでもあります。
しかし、私の先行しているイメージでは、マックスの手組をしないことにはみんな違和感を覚えるのでしょうね。

ここでの選択は3つ。
前述したテンパイ取らずの打八は常時の打牌。
様子を伺っている時はダマで打5。
そして自分の状態が悪いと感じている時は打5のリーチ。

自分が四人の中で一番下だと感じているだけに、視聴者の皆さんにもがっかりするであろう選択をしたのです。

結果は荒プロからの九の出アガリ。
この手を2900で終わらせることは本意ではありません。
しかし、それが今の自分の状態だと判断したのです。

この手がどのように変化したかは今となってはわかりません。
それでも、そのような選択をした私の心が今決定戦の結果となったのではないかと、今振り返ってみて感じています。


この半荘は結局右田プロが競り勝ち、私は最下位で初日を終えました。
苦しい一日となりましたが、このような内容の一日はこの一年間では一度もなかっただけに、ホテルに帰ってからもかなり悩み考えました。

予約していたタイムシフトを見る余裕もなく、疲れ切った私は浴槽に飛び込み、一日の疲れを癒すことに専念したのです。


~続く~