雀サクッの麻雀コラム
2019年08月07日(水)
| 雀サクッ
バーチャルYouTuber夜桜たま!「夜桜たまがマンガで教える麻雀入門」読んでみた!!
【著:明松 麹】
バーチャルYoutuber夜桜たま。彼女が筆を執った麻雀本「夜桜たまがマンガで教える麻雀入門」が、Twitter等のSNSを中心に各地でバズっている。気になったので、さっそく本著を手に取って、その内容を目を通してみた。
土田浩翔プロが、本著帯煽り文にて、「たまちゃんは比類なき教え上手だった!」と書き、しかもその上、本人ブログ内にて、
「たまちゃんって?!、もしかすると麻雀の専門家なの??(中略)たまちゃんは天才なのではないかな?と思えてしまったのです」(本人ブログより一部抜粋して引用)
と、絶賛するほど。
かの土田浩翔プロを唸らせる麻雀本……これは面白いに違いない!
――と、その前に、夜桜たまって誰? という方に対して、彼女のプロフィールを簡潔におさらいしておこうと思う。
■アイドル部所属美少女雀士 夜桜たまちゃん!
夜桜たまちゃんは、一言でいえばバーチャルYoutuberだ。Youtuberという言葉は、もう誰もかれも耳なじみのある言葉だろうが、バーチャルYoutuberは、バーチャル空間で活躍するYoutuberのことだ(以降、Vtuberと表記)。
百聞は一見に如かず。実際に、夜桜たまちゃんがVtuberとして活躍している動画を見ればわかりやすいだろう。
夜桜たまちゃんは、Vtuberプロダクション「.LIVE(どっとライブ)」が運営するグループ「アイドル部」に所属するVtuberで、ゲーム実況をはじめとして、多くの動画を投稿している。
さて、そんな夜桜たまちゃんであるが、彼女は天鳳をメインフォールドに活躍する女流雀士でもある。しかも、実際に多くの麻雀動画を投稿し、また、「将棋四面指し」ならぬ「麻雀四面打ち」なる企画も実行した、凄腕の雀士なのだ。
■夜桜たまがマンガで教える麻雀入門(たまーじゃん)
実際に購入したのがコチラ。表紙に映っている白髪の女の子がもちろん、夜桜たまちゃん。手を挙げているのは、同じくアイドル部に所属する花京院ちえりちゃん。本著の制作にも関わっている。
表紙を見渡したところ、特に変哲もない……と思いきや! なんと、監修:土田浩翔プロ、とある。
土田浩翔プロといえば、最高位戦日本プロ麻雀協会特別顧問を務め、またプレイヤーとしての数々の実績、麻雀講師としても多くの生徒を教え導いたトッププロのひとりである。
実は、夜桜たまちゃんは、土田浩翔プロの大ファンなのだ。そういう訳で、憧れのプロ雀士である土田浩翔プロを監修として指名し、土田浩翔プロも快くそれを受諾。
土田浩翔プロ自身も、本人ブログの中で、本著に関われたことに対して感謝のコメントを述べている。
土田浩翔プロ 公式ブログ「麻雀の宇宙へようこそ」
■麻雀は「楽しい」って思えることが大切 ――ばあちゃる学園 麻雀部 夜桜たま
さっそく中身を見てみよう。ページを開くと、夜桜たまちゃんと土田浩翔プロふたりからの本著及び、これを読む人に対する言葉。続いて目次。そして、本編に入る前に、「この本の使い方」というページで指が停まる。
「麻雀入門書なのだから、麻雀を上達するための『使う』のでは?」
しかしそれは誤りで、たまちゃんは本著に対して、以下のような言葉を寄せている。
「この本は、麻雀初心者の方が麻雀を楽しく打てるようになることを目指す本です。(中略)自分らしい『打ち方』を見つけられるように、ルールを暗記して覚えるための本ではなく、麻雀を打つときに参考するにするための本として、ぜひこの本を片手に、麻雀をプレイしてみてくださいね。」
つまり、この本は、「強くなる」ための本ではなく、「楽しくなる」ための本であるということ。
「正しい打ち方ではなく、楽しい打ち方のために。」とは、帯にも書かれている言葉で、たまちゃんが本著に寄せている想いも、推して知るべし、というところだ。
■0日目 プロローグ
目に熱いものがこみあげてくるのをこらえながらさらにページをめくると、漫画によって描かれたストーリーが続く。なんとこの漫画自体、夜桜たまちゃんの手によるもので、彼女の器用さがうかがい知れるというもの。
この本全体にわたって、漫画というコンセプトにならい、ストーリー仕立てで麻雀に関する説明が行われる。
物語は、「私立ばあちゃる学園」の「麻雀部」から始まる。麻雀で勝てない部員に対して、初心に帰って麻雀を勉強しなおそう、という具合で、麻雀合宿がスタートするのだ。
■1日目 麻雀の基本
まったく麻雀が分からない人でも退屈にならないように、ポップでキャッチーな雰囲気で、面子や順子、刻子、などの用語が説明されていく。初心者がしがちな質問を、花京院ちえりがたまちゃんに尋ねているさまは、ほほえましいし可愛らしい。
■2日目 麻雀のはじめ方
2日目からは新キャラクターも登場する。同じアイドル部に所属するVtuberたちが、様子を見に来るという体で訪れ、いつの間にか着卓している。これで面子不足も解決だ。
ちなみに筆者はもこ田めめめ推しだ。
■3日目 役について
3日目からは、麻雀を覚える上での第一の関門「役」の説明が始まる。その中で、いままでにない斬新な視点だと感じたのが、以下の画像。
ふつう、多くの麻雀教本では、「翻数」による分類を行っている。しかし、本著では、「〇〇な人向け」というカテゴライズで表記されている。なるほど、確かに、「麻雀に勝つ」ためには「翻数」の暗記は必須だが、「麻雀を楽しむ」のなら、「自分に性格に合った役」を覚える方が大切に違いない。
■4日目 副露について
ここでは「ポン」「チー」「カン」について説明されている。夜桜たまちゃん流の「鳴き」に関する視点はとても簡潔でわかりやすく、上級者にも一見の価値ありだ。
■5日目 スジ、壁について
なんとここで「スジ」と「壁」も説明してしまう。しかし、さすがはたまちゃん、とても分かりやすい説明をしてくれている。「スジ」「片スジ」「裏スジ」「間四軒」など、中級者でもこんがらがってしまいがちなこれらを、「安全牌を探すため」「危険牌を探すため」のふたつに分類しているのだ。
■6日目 牌効率について
そして6日目は牌効率。5日目の内容がきめ細やかだったから、さぞ素晴らしいものが……と思いきや、意外と小ボリューム。しかしそれもそのはず。
この本は、「正しい打ち方」のための本ではなく、「楽しい打ち方」のための本だから。牌効率は、いわばお守りのようなもの。必修科目ではないのだ。
■7日目 自分に合った打ち方
最終日にして、この漫画の本懐がついに果たされることになる。
まずは下の画像をご覧あれ。
YES/NO診断に従って、A~Eのタイプに分類し、それに基づいてたまちゃんがあなたにピッタリな打ち方を診断してくれるのだ。
詳しくは、ぜひ本著をお手に取って、自分の目で確かめてみてほしい。
■それでは皆さん! 一緒に麻雀してみませんか? ――ばあちゃる学園 麻雀部 夜桜たま
トッププロが手掛けた様々麻雀本をいままで読んできたが、たまーじゃんを読了した後の筆者の胸は、そのいずれを読んだ時にもない、充足感で満たされていた。
これは、今までの麻雀本とは一線を画している。しかし麻雀本に違いはない。
例えば、ほかの麻雀本との違いは、「点数計算」がおまけページに、お気持ち程度にか書かれていないところなどが挙げられるだろう。麻雀を楽しむだけならば確かに点数計算は必要ない。(むろん、あるに越したことはないが)
土田浩翔プロの言葉を借りると、まるで「絵本」のようだ。
「絵本」と言っても、侮ることなかれ。絵本の中には、子どもを笑顔にするものから、大の大人を号泣させるものまである。たまーじゃんは、そのどちらの性質も兼ね備えた、麻雀本であった。
本著の内容をざっくりとまとめてみたが、このレビューだけではその良さの一部も伝えられていないだろう。
麻雀を始めてみたいけど……という方はもちろん、初級者、上級者まで、ぜひこの本を手に取ってみてほしい。