zeRoの麻雀ひとり旅 ~第二十九回:愛知県名古屋市「華鳥風月」~
ほとばしる情熱
俺の体を駆け巡る血が、熱くたぎっている。
Mリーグの観戦記を書くために見た昨夜の試合が、とても熱かったのだ。
読みを駆使し、ギリギリまで攻めるトッププロたちのめくりあい…
「今夜は眠れそうにないぜ…」
その戦いを見て熱くなった俺は、無性に麻雀が打ちたくなっていた。
久しぶりに「zeRoの麻雀ひとり旅」の取材依頼があったのはそんな折だった。
依頼主は愛知県 栄エリアにある華鳥風月というお店らしい。
高級料亭のような店名だな。格式のある、老舗の雀荘だろうか。
ふふふ、悪いが俺のほとばしる情熱を冷ますために、今夜は数人の生贄が必要そうだ。
いざ栄へ
寒風吹きすさぶ11月のとある夕方、華鳥風月のある栄へ向かった。
地下鉄栄駅・13番出口から徒歩5分、スマホ片手にうろうろしているうちにすぐ見つかった。
エレベーターで3階まで進み、重い扉を開ける。
この扉の向こうに巣食うは、名だたる昭和の打ち手だろうか、それとも雀ゴロかぶれのチンピラだろうか。
こちとら名古屋で30年近く番張っとるんじゃい。
どんな猛者が出てこようとも、負けるわけにはいかねぇ。
その思いが、扉を押す手を強める。
巫神子(みかんこ)たちのお出迎え
「ようこそにゃ~」
…どうやら入る店を間違えたらしい。
そう思って店を出ようとした際に、麻雀卓が目に入った。
どうやらここで合っているようだ。
女の子に待ち席で座るよう促される。
いや、なにか違う。
女の子は嫌いじゃない。いやむしろ大好きだ。
でも今夜求めていたのは、熱い戦いだったはずだ。俺は飢えた獣なのだ!
と、思いながらも待ち席に座った。
お団子でも出てきそうな和を基調とした待ち席で、奥にはモニターがある。
Mリーグなども流しているらしい。
「では説明するにゃ!」
巫神子からまず世界観の説明から始まった。
(うららちゃん)
https://twitter.com/urara_kagetu
この女の子たちは巫神子(みかんこ)と言われる妖精らしい。
巫神子は、麻雀と給仕をすることで人間をもてなし、心から楽しんでもらうことを使命としている、と。
説明中も、全て語尾に「にゃ」をつける徹底ぶり。
卓内に入っている巫神子たちも「にゃーにゃー」言っている。
今どきのコンセプトカフェの雀荘版で、コンセプト雀荘というらしい。
俺も野暮じゃない、付き合ってやるぜ、その茶番に…。
と、大人の対応を見せる。
続いてうららちゃんは丁寧にシステムを説明してくれた。
1時間あたり1,000円のタイムチャージ(フリードリンク付き)と、1半荘200円のゲーム料金が必要となるようだ。
店内で使用するお金は店内通貨(ピン)へ交換して使用するルール。
現金→ピンへの交換はできても、ピン→現金への交換は一切できない。まずは最小限の3000円(15ピン)をチャージした。
即落ち
ぐぅ~。
飢えた獣のお腹が鳴った。
そこでうららちゃんに何か食べるものはないかと聞くと、お茶処に案内された。
お茶処とは
店内の一角にある、少し高くなったスペース。
お茶処は時間料金にワンオーダーをすることで入室可能。麻雀を打たなくても、コンセプトカフェ的な用途だけでの利用もOKとのこと!
どれも可愛らしいメニューばかりだが、うららちゃんオススメのオムライスを注文。
ケチャップでメッセージも書いてくれる。
書かせた感が否めないし、zeRoよ、めっちゃ楽しんでるじゃんとツッコミが聞こえてきそうだが、申し訳ない。すっごく楽しい。
お茶処では
こうやって、必ず巫神子がそばについてくれ、他愛もない会話に付き合ってくれるのだ。
ピンを使うことにより、推しの巫神子を時間単位で指名することもできる。
こう言っちゃなんだが、激安のキャバクラみたいなものだ。
しかも全員「麻雀」という共通の趣味で繋がっているため、話題には事欠かない。
この画像の左上の子、瑞原明奈プロに似てない?と言ってもしっかり通じるのが嬉しい。
会話のコツは5W1Hと言うが、その中でもWhen(いつ)が一番使いやすい。
Whenは答えが明確なので返ってきやすい。
その答え1つ1つに共感したり感想を述べたり掘り下げたりするのも、相手を気持ちよくさせるポイント。
「いつ麻雀初めたの?」
「1年前にゃ、華鳥風月のオープン直前に覚えたにゃ!」
「へぇ、じゃあまだ覚えたばっかりなんだね」
というような感じ。
オムライス1つでは食べ足りなかったので、ぜんざいも注文した。
可愛らしい巫神子と一通り会話を楽しみ、お腹も膨れて、既に満足感でいっぱいだ。
いざ実戦
さ、満足したしそろそろ馴染みの雀荘へ行くか…と思ったが、ここで帰ったら雀サクッに怒られてしまうので麻雀も打つことに。
案内された卓は、お客2人と巫神子1人、そして私でゲームスタート。
基本的に1卓に1人巫神子が入っているそうだが、お客4人の卓でも巫神子が周りで見て応援や会話をしてくれるらしい。*お店が忙しい時は違うかも。
「華にゃ!」
「華」「鳥」「風」「月」と書かれた華牌があり、抜くことでドラ扱いになる。
抜きドラは3人麻雀で慣れているが、4人麻雀で華牌入りは非常に珍しい。
「ナイスにゃ!」
華を抜くたびに巫神子が褒めてくれる。
最初は
「華…にゃ(小声)」
と申告するのにやや照れがあったが、すぐに慣れて
「ポンにゃー!」
と全力で世界観に溶け込んでいる私の姿がそこにあった。
華の他に、赤ドラが萬子・筒子・索子の「5」の牌に2枚ずつ入っており、表ドラ4枚、赤ドラ6枚、華牌4枚、計14枚。Mリーグルールと比較して2倍のドラ枚数、これはかなりのインフレルールだ。
自分以外の3人の仕掛けが入っている9巡目
こちらの手牌から誰にも通っていない8pを切る。
「ロンにゃ!」
巫神子の手牌が倒される。
ドラ表示牌:
「中、赤、赤、ドラ、華、華」
と指を折っていく巫神子。
なんと華鳥風月では、点数申告の際に役と翻数を指折り数えていくことがルール化されているのだ!
さらに点数も
符計算がなく3,900もない。非常に簡易的なルールである。
着順に応じて店内通貨をやり取りするが、
ラス→トップに2ピン
3着→2着に1ピン
と、非常にマイルドなルールだ。
わからないことがあったら巫神子が優しく教えてくれるし、本当の初心者でも十分に楽しめる。
昨今、雀魂やMリーグで麻雀を覚えたという人が本当に増えた。
そういう人たちがリアルな麻雀を安心して打つには、格好の場所ではなかろうか。
どうしても最初の雀荘って緊張するし、怖い思いをしたらトラウマになっちゃうからね。
私が同卓した2人も、手付きは覚束なく、切るスピードも決して速いものでは無かった。
しかし必死に考え、そして巫神子に話しかけながら、心から麻雀を楽しんでいるように見えた。
そうなんだよなー。
いくら推しの女流ゲストが出勤しているお店に行っても、麻雀とゲストって相性が悪いのだ。
フリー麻雀や麻雀大会ってあまり大っぴらに話してはいけないような空気感があって、話したいけど話せない、ともやもやしたことがある方は数多くいるはずだ。
でも巫神子にはとても話しかけやすく、いやむしろ話しかけるのがマナーみたいなところがある。
私から8pでアガったのは
いちごちゃん。ロリ系の巫神子だ。
こう見えて負けん気が強く、渋谷ABEMAS 松本吉弘プロの大ファンらしい。
「ほほう、松本プロはガタイが良くて迫力あるけど、俺も座高じゃ負けないよ」
と笑いを取りに行く。
さて、この和やかな雰囲気の中申し訳ないが、どうしてもルール対応について自然と考えてしまうのが悲しいサガ。
華牌や赤ドラが多いルールで腕の差が出るのは「オリ」。この1点だ。
一見派手に見えるルールだが、放銃による失点を最小限にしなければ勝ち切れない。
インフレルールだからこそ、押せる局面を厳しく見極める必要があるのだ。
そういう意味では
9巡目に仕掛けが3人入っている中、無造作に無筋(8p)を切ったのはドヌルいの一言だ。
しっかりとオリるべきだった。
散々「俺は名古屋の魑魅魍魎たちを相手に生き抜いてきた雀ゴロだぜ」と巫神子たちにマウントを取ってきて、いきなり飛び寸になっている…ダサい。
東場は手が入らなかったが、必死にオリて耐え忍び、南場の親番で爆発。
一気に5万点超えのトップ目に。
(上記画像の良さそうな手牌もアガって更に加点した)
巫神子たちも「すごーい!」と褒めてくれる。
無事トップで半荘を終了すると…
吊るされている鐘をジャラジャラと鳴らして祝福される。
次に2着を取ったところで、その日の麻雀は終えることとした。
15ピン購入→2半荘(-2ピン)→トップ・2着(+3ピン)→16ピン
で、手元には16ピン残った。これをお店に預けることができ…
次回来店の際にこのカードを使うことによってまた今日預けた16ピンを使えるという仕組みだ。
最初は複数の料金設定があって少し割高かなと感じたが、ピンに関しては店舗に預けて今後も使用できるので、基本的には時間料金だけで楽しめる。勝てばピンは減らないし、負けてもラスで-2ピンなのであっという間にZEROになって追加購入が必要なわけではない。
そう考えるとかなり良心的な料金設定とも言えるのではないだろうか。
はじめの一歩
最近私はバドミントン教室に通っている。
全くのド素人だ。
そしてそのバドミントン教室が主催する大会に参加した。
大会はクラス分けされており、私はもちろん初心者クラスである。
大会はどういう雰囲気なのか、猛者がもさもさしていないか…といろいろ不安があった。
しかし実際に参加してみて本当に楽しかった。
たとえ初心者だろうと下手だろうと、ゲームは面白い。
小学生に負けたのだが、次こそは!と思えたのだ。
どの業界でもはじめの一歩はとてつもなく重い。
その入口として、華鳥風月のような限りなくゆるふわで、優しいお店は最高だ。
雀魂やMリーグで麻雀を覚えた人がリアル麻雀を打つ「はじめの一歩」として、これからはこういうお店が必要になってくるのかな…と心から感じた。
華鳥風月が家の近くにあったら、初心者ではない私は麻雀を打ちに行くということはあまり無さそうだが、話しながらご飯を食べに行ってしまいそうだ。
「またにゃ!」
「またにゃ!」
と巫神子たちに見送られ華鳥風月を後にした。
火照っていた体は、完全に癒やされていた。
評価
刺激度 ★
清潔感 ★★★★★
サービス ★★★★★
大好きオムライス ★★★★★
(なお「刺激度」は動くお楽しみチップを元に 新宿ルールを★★★★★、学生でも安心して遊べるルールを★★★、ノーレートルールを★…として表現)