zeRoの麻雀ひとり旅 ~第三十回:大阪市北区「麻雀STARS」~
タタタタタタ…「ポン」「チー」「チー」「ロン」
空白の捨て牌がザーッと並んでいき、誰がアガり、そしてまた河が空白になる。そこにまた牌が並んでいく。それを延々と繰り返していく。
ネット麻雀で牌譜を開き早送りをしていくと、麻雀は牌を並べていくことの繰り返しなんだな…と当たり前のことに気づく。
謹賀新年
2023年になった。好評の「ゼロ旅」も今回で30回目を迎える。
世の中は未知のウイルスによって景色が変わり「ゼロ旅」で訪問した雀荘の中にも閉店してしまった店も多い。
かくいう私もとりまく状況が変わった。昨年プロ団体(最高位戦日本プロ麻雀協会)に入会したのだ。齢45を数える私にできることなんて限られているのかもしれない。
ただ1つだけ言えることは、これまで誰よりも空白の河に牌を並べ続けてきた自負があり、そしてこれからも変わらず牌を並べ続けていくことだ。
45でプロなんて異例なことかもしれないが、そんな周りの評価なんて聞こえない。自分がやりたいことをやる、異例かどうかなんてどうでもいい。
関西の狂犬
そんな最高位戦の先輩にあたる酒井一興プロのお店が、今回訪れる「麻雀STARS」である。
酒井プロは我の強い性格からネット内外でたびたび誰かと衝突し、いつしか関西の狂犬と言われるようになっていた。
自分を含め、昔はそんな輩も多かった印象だが、近年はそういう人も減り、相対的に目立ってしまっているのかもしれない。
どんな店なんだろうか…酒井プロのこともあり、私は一抹の不安を覚えながら麻雀STARSに向かったのだった。
オシャレな店内
麻雀STARSは大阪梅田の超一等地にある。泉の広場から地上にでてすぐそこで、雀荘フリークの方であればキラーチューンの跡地と言った方が話は早いか。
「ZEROさん、いらっしゃいませ!」
酒井プロが笑顔で迎えてくれた。
待ち席がBARのようなカウンターになっており、その前には大きなモニターが鎮座しており、麻雀対局の映像が流されている。なかなかオシャレだ。
さほど広くはない店内だが、余計なものを排除しスタイリッシュな空間となっている。
さっそく酒井プロからルール説明を受ける。
ルールに関しては実戦しながら解説していくが、マナーの面で面白いと思った部分があった。それは「プロ団体のみなさまへ」というページ。いくつかあるうちに、印象に残った項目がこちら。
遅すぎるのは問題外だが、早すぎても威圧感を与えてしまう。なるべく周りの3人に合わせるよう配慮しようということだ。
一般客向けにもマナー項目はある。
いろいろ細かいように見えるが、ようは一番上にある「感じ良く打ちましょう」の一言に尽きる。
スタイリッシュな空間とルール説明を受け、酒井プロの印象がガラリと変わった。
「お客さんには麻雀に集中してもらいたいんです。シンプルだけどそれが一番のサービスになると思っています」
と、酒井プロは語る。お客さんが気持ちよく打てることだけを考え、余計なものを排除し、ルールやマナーを構築する…その心地よさは、実戦中の至るところで感じることができた。
戦慄の親流し
「チー」
5巡目、親の私は切られた2枚目の6mに声をかけた。
134r578m133p2899s 出る6m ドラ中 6mを456mで鳴く。狙いはイッツーである。本来ならもう少し門前で育てたいところであるが、STARSは条件付き東南戦…いわゆるスピードバトルなのだ。
「ロン、2900の1枚」
123m33p99s ロン9s チー978m チー64r5m
幸先よく先制。各「5」牌に赤が1枚ずつ入っており、赤と一発・裏にSTARSチップが1枚もらえる。他には金5sが1枚入っておりSTARSチップが2枚。リーチ後オールマイティ牌となる白ポッチも1枚入っており、リーチ後白ポッチアガリでもSTARSチップが1枚だ。
そしてここからが最大の特徴である。
「流します」
戦慄の親流し・・・そうSTARSでは親でアガった後、親番を流すか、連荘するか選択ができるのだ。*流した後は本場は0本場で次局へ進む。
STARSは完全順位戦であり、トップから+10・+3・▲4・▲9のSTARSチップのやり取りをする。このやり取りの特徴は2着以上を取ることが大切…ということ。(場代はトップ者がまとめ払い)
たった2900のリードだが、次に手が入らなかった時の親被りを避けることができる。仮に連荘できたとしても、場センゴ(1本場1500点)だから逆襲されやすい。逆に自分の親を流してしまえば、もう1回のアガリで次はラス前である。以降手が入らなくても2着はかなり維持しやすいだろう。
「ツモ」
2255m22p金5599s西西北 ツモ白ポッチ
「2000 4000は2500 4500の3枚」
東2局もリーチ後オールマイティとなる白ポッチをツモり、このゲームはトップを取ることに成功した。
ちょうどいい客層とは
さて店内風景やルールに関して語ったが、私が一番伝えたかったことがある。
卓に入る前
「うちは本当にお客さんがいいですよ」
と酒井プロに言われた。
いいお客さんってなんだ?自分のお店だからそう感じているだけじゃないのか。最初はそう思った。でも牌を交えていくうちにその真意がわかったのだ。
いい客層ってなんだろう。
和気あいあいとした雰囲気が好きという人もいる。しかし馴れ合いがすぎると初見の人が入りづらくなる。
会話なんて一切無い方がいい、という人もいる。しかし全く会話が無いとギスギスした雰囲気になりがちだ。
どの程度の会話がいいか――はフリー雀荘における永遠のテーマではないか。
今回、STARSで打ったお客さんたちは、その中間だった。
余計な会話は無いが、時折交わす一言二言の言葉が面白い。勝っている人が横柄になることもなく、負けている人が腐ることもなく。
酒井プロのいう「お客さんがいい」ってこういうことかと腑に落ちたのだ。
サンマの聖地である関西において、4人打スピードバトルは異色の存在と言える。その異色の存在を愛する者同士の連帯感がそうさせるのか…いや、それに加えて酒井プロの雰囲気作りが大きいと思う。
麻雀に集中できる環境を作ることに尽力した結果、いいお客さんが集まってきたのではないか。
はじめは調子良くトップを重ねていったが、徐々に負けが込むようになり、成績はついにマイナスになった。しかし、あまりの居心地の良さに成績は気にならない。いつのまにか私は酒井マジックにかかってしまったようだ。
酒井プロから関西の狂犬っぷりは微塵も感じることができない。
むしろ近くの美味しいお店や宿を細かく紹介してくれた。そして最高位戦のことやこれからのことを語り合った。本当に気遣いのできる優しい男だった。
まとめ
STARSは大阪で希少な4人打スピードバトルを楽しめるお店。
本編には盛り込めなかったが、日替わり還元イベントの開催や、女流プロゲスト来店日は遊びやすいルールの開催など、幅広く楽しめる工夫が凝らされている。
麻雀に集中できる環境、客層の良さ、はどれだけ文章で書いても伝えるのには限界がある。
ぜひSTARSに行って実感してもらいたい。
【ゼロログ評価】
刺激度 ★★★★★
*女流プロゲスト来店日は★★★ルールも開催
清潔感 ★★★★★
サービス★★★★
客層の良さ★★★★★
(なお「刺激度」は動くお楽しみチップを元に 新宿ルールを★★★★★、学生でも安心して遊べるルールを★★★、ノーレートルールを★…として表現)