ifの世界
時おり考えること。
もしもこの世に麻雀というゲームが無かったら……。
「いうて、何かしら別の趣味に打ち込んで、大して変わらない人生を送っていると思うよ」
あなたは笑ってそう答えるだろうか。
この命題は、語っても意味のない「たられば」なのかもしれない。
来訪
今日行く雀荘は、これまでレポートしてきた店と違い、駅前10秒! という近さにはない。最寄り駅から20分くらい歩いた、少し遠いところにある。
夕暮れの街を歩きだす。
重い荷物を持っていたからか、しばらくすると、足の裏は熱くなり、呼吸は激しくなってくる。ダイエット中の身としては、ちょうどいいかもしれないな。
お腹をさすりながら歩いていると、お目当ての「麻雀ナイス」の看板が見つかった。
「いらっしゃいませー」
ドアを開けると女性の方から声を掛けられる。
中を見ると、貸し卓が2、3卓立っていたが、フリーはまだ立っていないらしい。
もう1人くるまで待つ運びになった。
少し疲れていたのでゆっくりしたいところだった。アイスブラックを頼んで、ルール説明をしてもらったあと、目を閉じてまどろみの世界に身を投じた。
実戦
1時間くらい経っただろうか、ドアを開ける音で目が覚めた。
若いお客さんと、会社帰りであろうスーツ姿のサラリーマン風のお客さんが来店したのだ。
こうしてメンバー1入りで卓が立つ運びになった。
私の起家スタートで始まったのだが、私が配牌を並べている間にまた1人お客さんがやってきて、座っているメンバーに「代走でよろしくー」と声を掛けた。
なるほど、ナイスはこの時間から人が集まってくるらしい。
貸し卓のお客さんも次々と集まってくる。
ナイスの特筆すべき点は、システムが非常にソフトかつマイルドであることだ。
以前足を運んだ龍馬くんのノーマルルールを「10」とすると、「2」くらいで、正直、ここまで優しいシステムで打つのは、高校生の時の家族麻雀以来だ。
ルールも、オーソドックスなアリアリルールの東南戦。
マナーに関しては最初に厳しく説明されたものの、やはりそのマイルドなシステムのおかげか、談笑を交えながらとても和やな雰囲気で対局は進んでいく。
高校時代を思い出したわけではないが、ナイスの雰囲気に、とても懐かしいものを感じた。
あの頃は、ただ牌を握っているだけで楽しかった。そのときに感じた楽しさは、20年以上経った今でも継続し、色あせることなく麻雀は生活に溶け込んでいる。
「たられば」の世界の自分は、麻雀以外にここまで打ち込める趣味をみつけることができるだろうか。麻雀の無い世界……考えただけでもゾッとする。
オーラスを迎えて、私は22000点持ちのラス目だった。
マンガンツモで2着、跳満をツモればトップになることができる。
そんな状況で手牌はこのようになっていた。
ツモ ドラ
ピンズのリャンカンが埋まり、手拍子でを切ろうとしたときだ。
ハタと手が止まった。
この手牌、イッツーがあるな……しかし、はドラそばで345の三色もあるので切れない。
1000点でもアガれば一応3着にはなれる。
ふと顔を上げると、サラリーマンも若者も、高校時代の私のように、牌に触れるだけで楽しくて仕方ないような表情を浮かべている。
そうだよな、いつしか楽しむ余裕がなくなっていたのかもな。
私は切ろうとしたを手に戻し、堂々とを場に放った。
ドラ
リャンメンターツを払ってのリャンシャンテン戻しである。
トップにオカのつくルールなら、これくらい大振りにトップを狙っていった方がよい。
次にをツモり、三色よし、イッツーよし、のゴールデンイーシャンテンになった。
ドラ
2着目からリーチが入ったところで、私もをツモってテンパイ。迷わずに追っかけリーチを打つ。
ドラ
山に手を伸ばし、一発のツモを見る。
――どこまでいくか。
【まとめ】
麻雀ナイスは、駅からは少し歩くし、特に目立ったルールやサービスがあるわけではない。
しかし、徹底したマナーと業界最安値と思われるシステムにより、フリーデビューにはもってこいの雀荘と言えるだろう。
この日、私は麻雀が無ければ、会うことすらなかったであろう人と、ほんのひとときだが牌で会話をし、そして一発でツモったに興奮を覚えた。
たとえシステムがソフトだろうとマイルドと、麻雀の魅力は1mmたりとも落ちることはない。
もし麻雀というゲームが無かったら……
私にとってはこの世界はただただ生きるために生きる、無機質な空間だったのだろうと確信する。
【評価】
刺激度 ★
清潔感 ★★
サービス★★★
業界最安値で麻雀の魅力を堪能!★★★★★★★
(なお「刺激度」は動くお楽しみチップを元に 新宿ルールを★★★★★、学生でも安心して遊べるルールを★★★、ノーレートルールを★…として表現)