四人打ち | 雀荘特集


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 タタタタタタ…「ポン」「チー」「チー」「ロン」
 空白の捨て牌がザーッと並んでいき、誰がアガり、そしてまた河が空白になる。そこにまた牌が並んでいく。それを延々と繰り返していく。

 ネット麻雀で牌譜を開き早送りをしていくと、麻雀は牌を並べていくことの繰り返しなんだな…と当たり前のことに気づく。

謹賀新年

 2023年になった。好評の「ゼロ旅」も今回で30回目を迎える。
 世の中は未知のウイルスによって景色が変わり「ゼロ旅」で訪問した雀荘の中にも閉店してしまった店も多い。
 かくいう私もとりまく状況が変わった。昨年プロ団体(最高位戦日本プロ麻雀協会)に入会したのだ。齢45を数える私にできることなんて限られているのかもしれない。
 ただ1つだけ言えることは、これまで誰よりも空白の河に牌を並べ続けてきた自負があり、そしてこれからも変わらず牌を並べ続けていくことだ。
 45でプロなんて異例なことかもしれないが、そんな周りの評価なんて聞こえない。自分がやりたいことをやる、異例かどうかなんてどうでもいい。

関西の狂犬

 そんな最高位戦の先輩にあたる酒井一興プロのお店が、今回訪れる「麻雀STARS」である。

 酒井プロは我の強い性格からネット内外でたびたび誰かと衝突し、いつしか関西の狂犬と言われるようになっていた。
 自分を含め、昔はそんな輩も多かった印象だが、近年はそういう人も減り、相対的に目立ってしまっているのかもしれない。
 どんな店なんだろうか…酒井プロのこともあり、私は一抹の不安を覚えながら麻雀STARSに向かったのだった。

オシャレな店内

 麻雀STARSは大阪梅田の超一等地にある。泉の広場から地上にでてすぐそこで、雀荘フリークの方であればキラーチューンの跡地と言った方が話は早いか。

 「ZEROさん、いらっしゃいませ!」
 酒井プロが笑顔で迎えてくれた。
 待ち席がBARのようなカウンターになっており、その前には大きなモニターが鎮座しており、麻雀対局の映像が流されている。なかなかオシャレだ。

 さほど広くはない店内だが、余計なものを排除しスタイリッシュな空間となっている。
 さっそく酒井プロからルール説明を受ける。
 ルールに関しては実戦しながら解説していくが、マナーの面で面白いと思った部分があった。それは「プロ団体のみなさまへ」というページ。いくつかあるうちに、印象に残った項目がこちら。

 遅すぎるのは問題外だが、早すぎても威圧感を与えてしまう。なるべく周りの3人に合わせるよう配慮しようということだ。

 一般客向けにもマナー項目はある。

 いろいろ細かいように見えるが、ようは一番上にある「感じ良く打ちましょう」の一言に尽きる。
 スタイリッシュな空間とルール説明を受け、酒井プロの印象がガラリと変わった。
 「お客さんには麻雀に集中してもらいたいんです。シンプルだけどそれが一番のサービスになると思っています」
 と、酒井プロは語る。お客さんが気持ちよく打てることだけを考え、余計なものを排除し、ルールやマナーを構築する…その心地よさは、実戦中の至るところで感じることができた。

戦慄の親流し

「チー」
5巡目、親の私は切られた2枚目の6mに声をかけた。

134r578m133p2899s 出る6m ドラ中 6mを456mで鳴く。狙いはイッツーである。本来ならもう少し門前で育てたいところであるが、STARSは条件付き東南戦…いわゆるスピードバトルなのだ。

「ロン、2900の1枚」

123m33p99s ロン9s チー978m チー64r5m

 幸先よく先制。各「5」牌に赤が1枚ずつ入っており、赤と一発・裏にSTARSチップが1枚もらえる。他には金5sが1枚入っておりSTARSチップが2枚。リーチ後オールマイティ牌となる白ポッチも1枚入っており、リーチ後白ポッチアガリでもSTARSチップが1枚だ。

 そしてここからが最大の特徴である。
 「流します」
 戦慄の親流し・・・そうSTARSでは親でアガった後、親番を流すか、連荘するか選択ができるのだ。*流した後は本場は0本場で次局へ進む。
 STARSは完全順位戦であり、トップから+10・+3・▲4・▲9のSTARSチップのやり取りをする。このやり取りの特徴は2着以上を取ることが大切…ということ。(場代はトップ者がまとめ払い)
 たった2900のリードだが、次に手が入らなかった時の親被りを避けることができる。仮に連荘できたとしても、場センゴ(1本場1500点)だから逆襲されやすい。逆に自分の親を流してしまえば、もう1回のアガリで次はラス前である。以降手が入らなくても2着はかなり維持しやすいだろう。

「ツモ」
2255m22p金5599s西西北 ツモ白ポッチ
「2000 4000は2500 4500の3枚」

東2局もリーチ後オールマイティとなる白ポッチをツモり、このゲームはトップを取ることに成功した。

ちょうどいい客層とは

 さて店内風景やルールに関して語ったが、私が一番伝えたかったことがある。

 卓に入る前
 「うちは本当にお客さんがいいですよ」
 と酒井プロに言われた。

 いいお客さんってなんだ?自分のお店だからそう感じているだけじゃないのか。最初はそう思った。でも牌を交えていくうちにその真意がわかったのだ。

 いい客層ってなんだろう。
 和気あいあいとした雰囲気が好きという人もいる。しかし馴れ合いがすぎると初見の人が入りづらくなる。
 会話なんて一切無い方がいい、という人もいる。しかし全く会話が無いとギスギスした雰囲気になりがちだ。
 どの程度の会話がいいか――はフリー雀荘における永遠のテーマではないか。

 今回、STARSで打ったお客さんたちは、その中間だった。
 余計な会話は無いが、時折交わす一言二言の言葉が面白い。勝っている人が横柄になることもなく、負けている人が腐ることもなく。
 酒井プロのいう「お客さんがいい」ってこういうことかと腑に落ちたのだ。

 サンマの聖地である関西において、4人打スピードバトルは異色の存在と言える。その異色の存在を愛する者同士の連帯感がそうさせるのか…いや、それに加えて酒井プロの雰囲気作りが大きいと思う。
 麻雀に集中できる環境を作ることに尽力した結果、いいお客さんが集まってきたのではないか。

 はじめは調子良くトップを重ねていったが、徐々に負けが込むようになり、成績はついにマイナスになった。しかし、あまりの居心地の良さに成績は気にならない。いつのまにか私は酒井マジックにかかってしまったようだ。

 酒井プロから関西の狂犬っぷりは微塵も感じることができない。
 むしろ近くの美味しいお店や宿を細かく紹介してくれた。そして最高位戦のことやこれからのことを語り合った。本当に気遣いのできる優しい男だった。

まとめ

 STARSは大阪で希少な4人打スピードバトルを楽しめるお店。
 本編には盛り込めなかったが、日替わり還元イベントの開催や、女流プロゲスト来店日は遊びやすいルールの開催など、幅広く楽しめる工夫が凝らされている。
麻雀に集中できる環境、客層の良さ、はどれだけ文章で書いても伝えるのには限界がある。
ぜひSTARSに行って実感してもらいたい。

【ゼロログ評価】

刺激度 ★★★★★
*女流プロゲスト来店日は★★★ルールも開催
清潔感 ★★★★★
サービス★★★★

客層の良さ★★★★★

(なお「刺激度」は動くお楽しみチップを元に 新宿ルールを★★★★★、学生でも安心して遊べるルールを★★★、ノーレートルールを★…として表現)

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zeRoの麻雀ひとり旅

第二十八回:愛知県知立市「東天紅」

学生時代

もう25年ほど前のことだから時効だと思って話そう。

私は高校生の頃から雀荘で麻雀を打っていた。
当時は名古屋にフリー雀荘は少なく、近代麻雀の広告で探したお店に、名古屋駅まで地下鉄を使って通っていたのだ。
若いからといって舐められないよう、とにかく押して押して押しまくっていた。打牌も強かった。イヤな客だったと思う。
成績は上下に大きくブレたが、勝った時はとてつもなく強く見える。

「強いねぇ」

その一言に自尊心は満たされ、根拠のない自信はさらに大きくなっていった。

「頼むから学生服でこないでくれ」

店長にそう言われ、駅のトイレで着替える日もあった。

そんな麻雀漬けのある日、とある若い打ち手をよく見かけるようになった。
当時ハマっていたメロンソーダを飲みながら、カウンター越しに店長に聞いてみる。

「店長、あの人は?」
「ああSくんね。彼も君と同じ高校生だよ」
「ふーん」

もう一度彼の打っている姿を視界に入れる。

『S』は私と真逆のタイプだった。
麻雀にハマっている点は同じだが、Sはおっとりしていて、私のようにギラギラしていない。トップをとってもラスを引いてもあまり感情を表に出さず、牌に触れること自体を楽しんでいるようだった。

(とろくさいやつだな)

若いとしか言いようがないが、私がSに抱いた印象はそんな感じだった。

知立市

前置きが長くなったが、今回向かったのは、知立にある「東天紅」というお店だ。
知立という地域は、名古屋駅から電車で30分以内に行ける、名古屋市から少し離れた場所にある。

皆さんは、地方の雀荘というとどのような店内を想像するだろうか。

・常連ばかり
・マナーに難あり
・清潔感に乏しい

あまりいいイメージを持っていないのでは、と思う。

この「東天紅」も、数年前まではその例外ではなかった。今どき当たり前である「赤牌」もなく、まさに昭和の雀荘という感じだ。
それはそれで常連達の憩いの場として機能していたのだろう。
ただ、一見さんや若い人はどうしても入りにくい空気があったのも事実である。
さらに今打っている常連だけだと、転勤や病気などで客数は減ることはあっても、増えることはない。

そこで、常連さんたちの場所を守りつつも、新しい人や若い人にも安心して楽しめるお店を作り直そう…と立ち上がったのが、冒頭に紹介した『S』である。

東天紅とは

東天紅は名鉄・知立駅から徒歩30秒と、降車してすぐそばにある。
年季の入ったエレベーターで4階に上がると…

ガラス張りのドアが出迎えてくれた。中を開けると

広々とした店内に陽光が差している。

さて店長となった数年前のSは、まず、マナー面の強化から取り掛かった。
先ヅモ禁止、発声を明確に…という当たり前のところから徹底。特にスタッフの動作や言葉遣いなどを指導し、お一人様でも安心して遊べる空気づくりに励んだ。

お次はルールだ。なるべく現代に即したルールに変えていく必要があるわけだが、一気に変えると常連さんたちが対応できなくなってしまう。そこで何年も掛けて少しずつマイナーチェンジを繰り返した。だいぶ落ち着いたと言える現在のルールを紹介しよう。

ルール・システム

東天紅では、ルールとしてはごく普通のありありルールを採用しているのだが、特筆すべきは完全順位制の半荘戦を採用している点だ。これはかなり珍しいのではないだろうか。
点棒とは関係なく、順位で全てが評価される。
天鳳と同じで、100点差であろうとトップはトップなのだ。

また、「55000点コールドでのトップ」「全員を原点(25000点)未満に沈めたトップ」を取ると「プレミアムトップ」となり、通常のトップと比較してかなり大きくなる。
プレミアムという響きが良く、この言葉のチョイスは「やるなS」と思った。

この完全順位戦、やってみるとかなり技術介入度が高いということがわかる。

例えば当日の実戦で、こんな点棒状況になった。

東家 35000 ←(私)
南家 24000
西家 26000
北家 15000

トップ目で迎えたオーラスだ。

私としては南家か西家にマンツモされなければトップが確定する。手牌次第だが、控えめに打つのが吉だろう。そして余裕があるなら26000持ちの西家を24900以下に沈めたい
そうするとプレミアムトップになるからだ。

南家と西家は点差が近いので2着を目指すことも十分に考えられる。安そうな仕掛けだと思ったら差し込むのも手だろう。

北家としては、マンガンツモで3着、ハネ満ツモで2着になるが、気をつけたいのは13002600とか中途半端な点数をツモると西家が沈んでしまい、プレミアムトップとなり支払いポイントが増えてしまうことだ。メンピンドラ1などで裏ドラ期待のリーチはあまりよくないことがわかる。

自分の状況と、他家の思惑を推察し、ベターな選択をしていく過程がとても面白いのだ。

完全順位戦だと、離れたラス目やトップ目はやることがなくなってしまうということが往々にしてあるが、このルールではそのへんはしっかり練り込まれていて、例えばラス目は飛びの回避(飛びにペナルティポイントがある)全員沈み阻止のアガリや差し込み、一発裏ドラのポイント狙い…など、考えることはある。

常時何かしらのイベントを開催しているし、ポイントカードもあり、還元している。

敏腕スタッフの作ったご飯が安価で食べれたりする。

私や「ウザク本」で有名なG・ウザクさんも定期的に顔を出している。

Sの接客

ルールやシステム、イベントを紹介したが、私が1番店のウリだと思っているのはSの接客姿勢だ。

Sは物腰柔らかく、話していて安心感がある。
失礼のないタイミングでお客さんに話しかけ、世間話から始まって、不満や要望などをごく自然に聞き出す。お客さんがお帰りになる際は、送りがてらエレベーターの入り口まで行き、必ずなんらかの交流をする。そしてエレベーターのドアが開くと「ありがとうございました」と、深々と頭を垂れるのだ。

自分にはマネできないな…そう思った。
いや、物理的にはマネできるのだが、私がやるとどうしても「やらされている感」が表に出てしまう気がする。

Sは、もともとたわいもないことを話すのが好きだ。それでいてそんな何気のない会話からもお客さんのことを大切に思っていることがヒシヒシと伝わってくる。
お客さんが話している間は黙って聞いているし、返ってくる答えも優しさに満ち溢れている。
スタッフに対しても厳しさと優しさを使いこなしているし、新規説明はとても丁寧だ。

天職、なのだと思う。
その凄さに気付けなかった学生の頃の私は若かったとしか言いようがない。

25年の時を越えて感じたSの人柄に、懐かしさとリスペクトを感じる。
今はそんな縁があって何かしらの手伝いをしているお店だ。

知立には他にフリー雀荘がなく、うまくやれば独占市場となるのに、思ったようにお客さんは増えず、Sを悩ましている。それでも店長になり始めた数年前と比べたら活気づいてきた方だと思う。
ぜひ、名物店長と、完全順位戦の面白さを体感するために、知立まで足を運んでもらいたい。

オマケ

待合席には、私が寄贈したモニターがある。
これは、どうしても麻雀を打ちながら競馬が見たいMリーグが見たいと思って寄贈したものなのだ!

評価

刺激度 ★★★★
清潔感 ★★★★
サービス★★★★

(なお「刺激度」は動くお楽しみチップを元に 新宿ルールを★★★★★、学生でも安心して遊べるルールを★★★、ノーレートルールを★…として表現)

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遥か頂

私の趣味の1つに登山がある。

遥か先に見える頂上へたどり着くためには、目の前の一歩一歩を積み重ねていかなければいけない点が麻雀に通ずるものがある……と、登りながらよく感じる。
名古屋からだと、三重県にある鈴鹿山脈が非常にアクセス良く、季節問わずよく登りにいった。有名なのはロープウェイもある御在所岳だろう。

実は、本日行く雀荘は、そんな鈴鹿山脈のお膝元にある。

名古屋から伊勢湾岸道路をひたすら西に走ると、30分もかからないうちに四日市のインターに着く。登山の日にはまだ夜が明けていない暗い時間に、頂上の景色やその後の温泉を楽しみにしながらこの道を飛ばしていったものだ。(安全運転)

そんなことを思い出しながら、四日市の駅前に着いた。

お店が用意してくれている近くの無料駐車場に車を停め、アーケードの中に一歩踏み入れる。

するとすぐに見つかった。

おしゃれなバーを思わせるような開けた階段を上り、ドアを開くと…

入店

「いらっしゃいませ!」

フリーが3卓回っており、元気な店員さんの声に迎えられた。
空いている卓に腰掛け、まずはサービスだという1本目のドリンクを注文する。

無難にお茶を注文。
そして店員さんから丁寧なルールやシステムの説明を受けたのだが、あまりにもいろいろ書きたいことが多い。長くならないようにざっくりと解説しよう。

まずはルール。
「クランキー」は中部地方では数少ない「条件付き東南戦」が楽しめるお店だ。
系列店の「やん」「条件付き東南戦」だが、あちらはシステムが非常にソフト。そしてここ「クランキー」新宿ルールに非常に近い。システムに差をつけることによって、お客さんに棲み分けしてもらおうという意図が伺える。

特殊なのは

特殊牌たちだ。
が入っていて、ドラ扱いで鳴いてもボーナスポイントの対象になる。
全部5じゃないので、マンズは下を大事にしたり、ソウズは上を大事にしたり……と、慣れるまで対応が大変そう。さらにが入っており、こちらは赤牌に比べて、ボーナスポイントが倍になる。
白ポッチはリーチ後にツモればオールマイティ。一発じゃなくてもいい。

の位置こそ違えど、新宿さながらのバチバチとした戦いが想像できる。

続いてシステムやサービス。

まず

トップや来店などでポイントを競う月間レース的なもの。
そして

賞金首イベント。
メンバーに挑戦を挑み、勝つとポイントがもらえるというもの。
挑戦する回数を選べたり、強いメンバーほど賞品が豪華だったりと、内容が凝っていて面白い。

そして特筆すべきなのは……


天鳳の段位戦と全く同じシステムで、ポイント評価されること。
お店で成績を管理して、成績上位者にはご褒美がある。

画像のように短期でのイベントも行っているのだ。

その他にも……

女流プロを定期的にゲストとして呼んだり……と、まぁとにかくいろいろやっている。

多彩なルールとシステムの紹介だけで終わってしまいそうな勢いだが、一応実戦レポートも記しておこう(笑)

実戦

この日は私の来店に合わせてか、『終日ゲーム代半額』という大赤字覚悟のイベントが行われていた。そして多くのお客さんで賑わっていた。
私はその中をあちこち移動させてもらって打ったのだが、終始調子が良かったと思う。

慣れるまでは大変と思っていた特殊牌も、マンズの下だけケアしておけばよい、と途中で気付いた。

まずピンズはいつもの感覚でOK。
ソウズはと、上下に分かれているので強く意識しなくてもOK。
マンズはだけなので、そこだけケア……という意識だ。

さて、実戦で印象的だったのが、マンガンをツモればトップになれる……というオーラス。
私は7巡目に

 ドラ

こんな手牌を迎えていた。
のイーシャンテンで、チャンス手だ。

ここへ、ふっとをツモってきた。

 ツモ ドラ

手拍子でを切ろうとしたが、ふと手が止まった。

(待てよ…これはウザク本などでよく見る牌姿じゃないか?)

もちろん受け入れ枚数としては打が一番広い。
しかしツモのペンリーチはいかにも苦しい。
の受け入れを消去すると、という選択肢が浮上してくる。

はツモやツモが機能している点が盲点となりがちだが、 受け入れ枚数も五分。
タンヤオが付加される可能性が高く、この状況下では一番手の選択と言えよう。

あまりお目にかからない牌姿なので、これでいいのか? という確認もした上で私はを切った。

すぐにをツモってきてリーチ。

 ツモ ドラ

一発でをツモり、逆転に成功した。

条件付き東南戦だと、僅差のオーラス など、痺れる局面を味わう頻度が通常の東南戦より多いので、かなり疲れてしまう。
その分充実度が高い、とも言えよう。

そんな疲れが出てしまったのか、終盤は牌を見落としたり、鳴くべき牌に声が出なかったり……と、非常に情けない麻雀になってしまった。
前半の貯金を崩す形で、ギリギリプラスで実戦を終了した。

感想

何度も他の「条件付き東南戦」のお店に行ったことがあるが、クランキーほど和やかなお店はないのではないか……と思った。メンバーやお客さん同士の会話も多く、それでいてマナー面でしっかりしていた。
「ワイワイ」「キッチリ」のバランスが、フリー麻雀荘の永遠の課題だと言えるが、クランキーはそのへんのバランスがきっちりしている印象だ。

多彩なイベントや成績管理などを含めて、通いたくなる仕掛けを常に考えているお店の努力を感じた。

また貸し卓も1卓1000円とお値打ちで、さらに1卓1300円で落ち着いて打てる個室も用意されている。

帰りの車の中、疲れてミスを頻発させてしまったことを振り返りながら、やはり一歩一歩の歩みが大事なんだな……と登山の帰りと重ねながら気を引き締めたのであった。

評価

刺激度 ★★★★★
清潔感 ★★★★
サービス★★★★★
熱くて楽しい空間!★★★★★

(なお「刺激度」は動くお楽しみチップを元に 新宿ルールを★★★★★、学生でも安心して遊べるルールを★★★、ノーレートルールを★…として表現)

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麻雀WELCOME 柏店

Mリーグが始まり、芸能人やアイドル……といった著名な方たちが、続々と麻雀に興味を持つようになってきた。
いや、興味は以前より持っていたはずだが、「タバコ・酒・ギャンブル」といった麻雀の持つ負のイメージが有名人にとってはマイナスであった。事務所から止められていたり、自主的に遠ざけていたりしたのだろう。
Mリーグのおかげでそのイメージは払しょくされつつある。もともと至高のゲーム性を持つ麻雀は、今後芋づる式に輪を広げ、近いうちにビッグバンを起こすかもしれない。

……そんな麻雀ブームの予感を覚える中、私は千葉県の柏駅にいた。
創業25年、関東を中心に17店舗を構えるマンモスチェーン店「ウェルカム」人気の秘密を探るためにここにきたのだ。

ウェルカム柏店は駅前にあった。
調べてみるとウェルカムはどの店舗も駅前に位置している。

どの土地へ行ってもアクセスはよく、いつもと同じ雰囲気・ルールで打てるので安心感があるのだろう。

入店

柏駅を降りてすぐに赤い看板がみつかった。

エレベーターで7階にあがり、店内に入ってびっくりした。
この日は土曜日だったが、まだ昼過ぎの時間帯である。

フリーと貸し卓のお客さんで店内はとても賑わっていたのだ。お客さんが多いとは聞いていたが、これほどまでとは。

「いらっしゃいませ! zeRoさんですね!」

写真左に映っている店員さんに声を掛けられ、待ち席に腰を下ろす。
私もフリー雀荘の店員を長年やっていたのでわかるが、普通満卓近くになったら頭がテンパるものだ。

カップ焼きそばの注文が入り、忙しい中作って持っていくと、その匂いに釣られて「あ俺もやきそば」と追加注文、それを持っていくと「あ俺も!」と延々と続く、恐怖の「焼きそばラッシュ」
ワン掛けとともに「じゃあ俺もやめるわ」という「ラス半連鎖」
そういったお客さんを接客しつつ、卓に入るとなると、いよいよ麻雀にはならない。
私はメンバーをやって、麻雀そのものが嫌いになってしまった……。

詳しくはZERO本(「ゼロ秒思考の麻雀」「麻雀強者の0秒思考」)に書いてあるのでぜひお手に取ってみてほしい。

しかしこの明るい店員さんは慣れているのか、過去の私と違ってどこか余裕があり、お客さんたちと会話をしながらお店を盛り上げていた。それでいてドリンクの注文やラストをそつなく捌き、見事なまでに店を回していた。

そのときの私はというと、店員さんの姿に感心しつつも、なるべく迷惑をかけないように、ルール表に目を通していた。

ごく普通のアリアリルール東南戦のようだ。
赤5が1枚ずつ、テンパイ連荘……など、奇抜な部分は全くない。
箱下計算がない点が、初心者にやさしいと言えるくらいか。

実戦

ルールを把握したところで私を待っていたというお客さんと卓を立てる運びになった。

卓に付いてすぐ、スマホの充電が少なくなっていることに気付いたが、柏店では全席打ちながらその卓で充電できる。

今どき、めずらしくもないサービスかもしれないが、本当に便利になったなぁと時代の流れを痛感する。

さて開局の親でのこと。

 ドラ

5巡目、ドラがアンコのチャンス手。
通常、ドラが3枚の役なしテンパイはリーチの一手だ。
私もリーチの声が出かけたが、ハッと思い出した。

(Mリーグで鈴木たろうプロが似たような手をしていたなぁ)

この手、リーチを打っても期待値(局収支)は大幅にプラスだろう。
しかし麻雀は選択と選択の比較、その連続である。

どうしてもアガリたいこの手牌、リーチを打って周りを牽制しつつ、ツモ抽選を増やす。
それも一策だ。こちらがドラを固めている以上、相手の手の平均ドラ保有枚数は少なく、押し返してくる可能性は通常より低いといえる。ただ、アガリまであるかは微妙なところだ。はおいそれと出てくる牌ではない。よく見たらがアンコなので、を引いてきて「後ひっかけ」になる……というケースもなくなるわけだ。

ではテンパイ外しの選択はどうだろう。手替わりの枚数はそこまで多くないが、ポンしてに構えられるのが大きい。アガリまで考えるなら……

リーチのリまで出かけた声を飲み込んで、マンズの下を誰も切っていないことを確認し、私は静かにを打った。
次にを引きこの形に。

 ドラ

これで盤石の構えになった。
瞬間の受け入れ枚数はそこまで多くないが、といった「二次有効牌」まで考慮に入れるとそこそこの変化量だと言えよう。
「二次有効牌」とは、直接的な変化ではなく、その牌によってさらに変化が広がる牌のことである。
完成メンツが真ん中に寄っているほど二次有効牌の量や質はよくなる。
例:>>

真ん中によっているほどリャンメン・三面チャンができやすいからだ。
また、連続メンツはもっと強くなる。
例:など

すぐにを引いてリーチ。一発でツモって6000オールになった。

 ツモ ドラ

Mリーグの観戦記を担当して、一流プロ達の麻雀を見る機会が増え、こうやって多くのプロ達から技術を学んでいる。引き出しが増えすぎて逆に弱くなってしまうケースもあるが、私はうまいこと自分の麻雀に取り入れられていると思う。

お客さんたちとなごやかに話しながら局は進んでいった。
南場に入って、私は6000オール以降手が入らず、周りのアガリを許し、ジリジリと点棒を削られていた。

ギリギリトップ目で迎えた南3局、ほとんど差のないライバルからリーチが入った。
私の手牌は劣勢で、オリざるを得ない展開だったのだが、終盤にイーシャンテンになっていた。

 ドラ

安全牌はしかなかったが、残り2巡というところまできていたのでこの局は凌げると思っていた。そこへリーチをかけている上家がをツモ切り。

かくしてまた私の手が止まった。

をチーしてを切ればテンパイ。は端っこなので通りやすい部類だろう。あと2巡ならテンパイを取る価値はあるともいえる。何せ上家とはテンパイノーテンでまくられてしまうほどの差だ。ただ、放銃してしまっては致命傷になってしまうかもしれない。

チーしてテンパイをとるかスルーして我慢をするか……

険しい顔をして考えていると……

「対局中ですが、おやつはいかがですか~!」

先ほどの店員さんが、チョコレートなどの甘いものを無料で配っていた。
何やらウェルカム恒例のサービスらしい。
麻雀はひたすら頭を使うので、甘いものは本当に身に…いや脳にしみる。
こういった細かな気配りが人気の秘密なのかもしれない。

「1ついただこうか」

と偉そうに言いつつ、一掴み持っていき、そのうちの1つを口に投げ入れる。
チョコの甘さが口に広がり、脳の緊張が和らいでいくような感覚を覚えた。

再び局面に目を落としたとき、ふっと閃いた。

(朝倉康心プロならこうするハズだよな)

チー
そして打

リスクはとらず、それでいて確実に形式テンパイに前進する選択!

 

私は物事を〇か×でとらえがちな節があるので、こういった中庸的な選択は思考外に追いやられやすい。
次に上家から打たれたをチーし、テンパイにこぎつけた。

結果的にこのケーテンで守った点棒が功を奏し、トップを守り切ることができた。

そしてその後もほどほどに調子よく、楽しい時間を過ごさせていただき、実戦は終了した。
その間も店内は賑わっていて、それを決して多くはない人数で捌く店員さんに感心しっぱなしだった。

ウェルカムはどこの駅前にもあるという立地の安心感の他、ルール説明がしっかりしており、基本的なマナーも教えてくれる。ゲーム代も安く、多彩な割引サービスもあり、初めてフリーデビューするという人にぴったりだろう。(特に学生さんはフリーも貸し卓も激安!!)
お客さんも新規に慣れているのか優しそうな人が多いなといった印象だ。
さすが雀荘デビュー3万名以上の実績! といったところだ。

マーチャオグループと統合し、共通のポイントカードや成績管理システムを導入している点も通いたくなる要素だと思う。

Mリーグが麻雀界の裾野を広げていることは間違いないが、ウェルカムやマーチャオのように長年麻雀デビューの若者たちを支えてきた街の雀荘の功績は忘れてはならないし、今後も麻雀を覚えたばかりの初心者をとりこむためにも重要なポジションになることも同様に間違いないと言えるのではないだろうか。

大満足のウェルカム柏店での実戦だった。

評価

刺激度 ★★★
清潔感 ★★★★
サービス★★★★
チョコレートの多幸感★★★★★

(なお「刺激度」は動くお楽しみチップを元に 新宿ルールを★★★★★、学生でも安心して遊べるルールを★★★、ノーレートルールを★…として表現)

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ifの世界

時おり考えること。
もしもこの世に麻雀というゲームが無かったら……。

「いうて、何かしら別の趣味に打ち込んで、大して変わらない人生を送っていると思うよ」

あなたは笑ってそう答えるだろうか。

この命題は、語っても意味のない「たられば」なのかもしれない。

来訪

今日行く雀荘は、これまでレポートしてきた店と違い、駅前10秒! という近さにはない。最寄り駅から20分くらい歩いた、少し遠いところにある。
夕暮れの街を歩きだす。
重い荷物を持っていたからか、しばらくすると、足の裏は熱くなり、呼吸は激しくなってくる。ダイエット中の身としては、ちょうどいいかもしれないな。
お腹をさすりながら歩いていると、お目当ての「麻雀ナイス」の看板が見つかった。

「いらっしゃいませー」

ドアを開けると女性の方から声を掛けられる。
中を見ると、貸し卓が2、3卓立っていたが、フリーはまだ立っていないらしい。
もう1人くるまで待つ運びになった。
少し疲れていたのでゆっくりしたいところだった。アイスブラックを頼んで、ルール説明をしてもらったあと、目を閉じてまどろみの世界に身を投じた。

実戦

1時間くらい経っただろうか、ドアを開ける音で目が覚めた。
若いお客さんと、会社帰りであろうスーツ姿のサラリーマン風のお客さんが来店したのだ。
こうしてメンバー1入りで卓が立つ運びになった。
私の起家スタートで始まったのだが、私が配牌を並べている間にまた1人お客さんがやってきて、座っているメンバーに「代走でよろしくー」と声を掛けた。

なるほど、ナイスはこの時間から人が集まってくるらしい。
貸し卓のお客さんも次々と集まってくる。

ナイスの特筆すべき点は、システムが非常にソフトかつマイルドであることだ。
以前足を運んだ龍馬くんのノーマルルールを「10」とすると、「2」くらいで、正直、ここまで優しいシステムで打つのは、高校生の時の家族麻雀以来だ。
ルールも、オーソドックスなアリアリルールの東南戦。
マナーに関しては最初に厳しく説明されたものの、やはりそのマイルドなシステムのおかげか、談笑を交えながらとても和やな雰囲気で対局は進んでいく。

高校時代を思い出したわけではないが、ナイスの雰囲気に、とても懐かしいものを感じた。
あの頃は、ただ牌を握っているだけで楽しかった。そのときに感じた楽しさは、20年以上経った今でも継続し、色あせることなく麻雀は生活に溶け込んでいる。
「たられば」の世界の自分は、麻雀以外にここまで打ち込める趣味をみつけることができるだろうか。麻雀の無い世界……考えただけでもゾッとする。

オーラスを迎えて、私は22000点持ちのラス目だった。
マンガンツモで2着、跳満をツモればトップになることができる。

そんな状況で手牌はこのようになっていた。

 ツモ ドラ

ピンズのリャンカンが埋まり、手拍子でを切ろうとしたときだ。
ハタと手が止まった。
この手牌、イッツーがあるな……しかし、はドラそばで345の三色もあるので切れない。
1000点でもアガれば一応3着にはなれる。

ふと顔を上げると、サラリーマンも若者も、高校時代の私のように、牌に触れるだけで楽しくて仕方ないような表情を浮かべている。

そうだよな、いつしか楽しむ余裕がなくなっていたのかもな。
私は切ろうとしたを手に戻し、堂々とを場に放った。

 ドラ

リャンメンターツを払ってのリャンシャンテン戻しである。
トップにオカのつくルールなら、これくらい大振りにトップを狙っていった方がよい。

次にをツモり、三色よし、イッツーよし、のゴールデンイーシャンテンになった。

 ドラ

2着目からリーチが入ったところで、私もをツモってテンパイ。迷わずに追っかけリーチを打つ。

 ドラ

山に手を伸ばし、一発のツモを見る。

――どこまでいくか。

【まとめ】

麻雀ナイスは、駅からは少し歩くし、特に目立ったルールやサービスがあるわけではない。
しかし、徹底したマナーと業界最安値と思われるシステムにより、フリーデビューにはもってこいの雀荘と言えるだろう。

この日、私は麻雀が無ければ、会うことすらなかったであろう人と、ほんのひとときだが牌で会話をし、そして一発でツモったに興奮を覚えた。
たとえシステムがソフトだろうとマイルドと、麻雀の魅力は1mmたりとも落ちることはない。

もし麻雀というゲームが無かったら……
私にとってはこの世界はただただ生きるために生きる、無機質な空間だったのだろうと確信する。

【評価】

刺激度 ★
清潔感 ★★
サービス★★★
業界最安値で麻雀の魅力を堪能!★★★★★★★
(なお「刺激度」は動くお楽しみチップを元に 新宿ルールを★★★★★、学生でも安心して遊べるルールを★★★、ノーレートルールを★…として表現)

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第十六回:徳島県徳島市「リング」

――ここは、色んな「マージャン」が楽しめるお店。

リングのHPを開くと、まずこのような文字が飛び込んでくる。

「オールラウンド麻雀荘」

本日訪れたリングというお店はフリー雀荘でもセット雀荘でもない。
新しい雀荘のカタチを感じるお店だったのだ。

徳島駅から徒歩十分。雑居ビルが立ち並ぶ中、そのリングはあった。

リング看板

階段を登り突きあたりにあったドアを開くと……

リング階段

明るい店内が広がる。

リング店内

3階ではセットの営業をしていて、個室もあった。

リング個室1

リング個室2

各個室にソファーがある! 素敵!

では2階ではどのような形態で営業しているかというと、

「毎日何かしらのノーレート競技麻雀大会が開催されている」

のである。

リングポップ

机には様々な大会のPOPが広がっている。

たとえば健康麻雀。
健康麻雀といってもいろいろあり、成績を管理するようなガチめの大会や、とにかく楽しんでもらえたらいい、という趣旨の集まり……など内容は様々だ。
GPCリーグのような競技大会もある。

何かしらの大会が

リングカレンダー

カレンダーをびっしり埋め尽くすほど、毎日開催されているのだ。

どんな麻雀を打ちたいかは人それぞれ。
その人にあった集まりを選んでもらい、参加してもらい、全員をとりこもう…という狙いなのだろう。

その中で、本日私が参加したのは、ポンチーカンサークルという競技マージャンリーグだ。

着いた時には閑散としていたが、時間前になるとぞろぞろと参加者が集まってきた。高齢者や女性も多い。
12時から5半荘打つのだが、全部参加しなくてはいけないわけではなく、途中参加や退出もできる。事前予約や登録なども一切不要で、かなり自由度が高いシステムだ。

ポンチーカンサークルの目玉は、ずばり「成績管理」にある。
トップ率やスコアだけではない。アガリ率・副露率・放銃率など、全30項目以上のデータがとられ、いつでもHPでみることができるのだ。「特定の対戦相手との相性」なんて項目もあり、これはどうなんだろう(苦手な相手は避けたくなる(笑))と思ったりもしたが、とにかくネット麻雀天鳳も顔負けのシステムだ。

さて、このデータをどうやって取得しているかというと……

リング手書き

なんと手書きである。
オーナーさんが複数卓を管理していて、局が終わる度に、誰が何副露していて、リーチ棒を出して、どのような点棒移動があったか……を手書きでメモしているのだ。
この用紙は様々な経緯をへて洗練された、リングオリジナルのデータ取得用紙だそうな。

この日は5~6卓で開催されたのだが、オーナーさんとお手伝いさん、それに常連さんが打ちながらデータを取得していた。

モチベーションをあげる素晴らしいシステムだと感じたが、同時に疑問も持った。
まず、どうしても取得のミスが生じること、そして労力が大きいことが問題にあげられる。
局が終わるとオーナーさんがやってきて、手慣れた様子で書き込んでいたが、人間だからどうしても見落としなどがあると思うし、とにかく大変そうだ。複数卓もあるとなおさら。
また、まだまだ雀力的には発展途上の常連さんに任せていたりもしたが、書き込むのに気を取られてリズムを乱したり、麻雀に集中できないでいた。
雀力向上のために取っているデータのはずなのに、これでは本末転倒だな……と感じたわけだ。
そして仮にデータが正確だとしても、それが即座に雀力向上に役に立つわけではない。
副露率1つとっても、3割だからいい、4割だから多すぎる、といった単純な話でもなく、どのような手から鳴いたのかが重要で、数字だけでは何もわからないのだ。
実際私も天鳳において、そのような数字はほとんど参考にしていない。

まとめると取得の負荷に効果が見合わない、ということ。
しかし、仮に雀力向上とはベクトルが違っても、データを見るのは楽しいし、それが参加者のモチベーションアップになるのなら、それは正義だ。
また取得方法も、今後は牌に埋め込まれたICチップによって簡単に取得できるようになるかもしれない。

あーだこーだと悪い要素ばかり考えず、新しいことにはどんどんチャレンジしていくオーナーさんの行動力と麻雀愛に感服した。

実戦

さて、大会の方だが、ポンチーカンサークルはもちろん赤ナシだ。
あなたならここから何を切るか。

東一局・3巡目・南家

 ツモ ドラ

赤ナシではドラと2ハン役への意識が重要だ。
この手では123の三色とピンズのイッツー、そしてドラ受けは残したいと思い、私はを切った。

をツモって打。そしてをツモったところでこの形。

 ドラ

イッツーと三色とドラ、いずれかと決別する時がきた。
私はドラ受けを見切り、を切った。
は全員ドラだが、で打点アップするのは自分だけ。つまりこの部分に限り「自分だけのドラ」と考える事ができる。
ドラ周りはどうしても警戒されがちになるので「自分だけのドラ」周りで勝負するのが分がよい、と考えたのだ。
直後、他の人にアガリが発生してしまい、この局は終わった。

5回打って、4→2→2→2→2
最後は疲れてしまったが、そこそこの成績を残せたと思う。

参加者はみな和やかかつ真剣で、心から麻雀を楽しんでいるように見えた。
ノーレートに触れる機会の少ない自分としては、とても新鮮な体験だった。

Mリーグによって麻雀の裾野が広がれば、このような競技麻雀に参加してみたいという人も増えるのかなーと感じた。

そして帰りに食べた徳島ラーメン。
濃い醤油が疲れた体に染みる。無料の卵を入れるとさらにいい感じ。
本当においしかった!

徳島ラーメン

評価

刺激度 ★★
清潔感 ★★★★
値段  ★★★★
革命の予感★★★★★
(なお「刺激度」は動くお楽しみチップを元に 新宿ルールを★★★★★、学生でも安心して遊べるルールを★★★、ノーレートルールを★…として表現)

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第十五回:香川県高松市「麻雀 Mah-マウ-」

 ――意外と大きい淡路島を縦断し、香川県に車を滑り込ませる。
 私が四国の地に足を踏み入れたのは、長い人生で二度目のことだ。愛媛の嫁と結婚した弟の結婚式以来である。その結婚式で、長男である私は、いつスピーチをふられてもいいように頭の中でシミュレーションしていた。

「愛媛(嫁)と愛知(弟)、奇しくも県名に『愛』の入る素敵な場所で育った二人がうんたらかんたら…ククク、言っちゃうかそんなことも……っ!!」

 などと考えていたら、一切話を求められることもなく拍子抜けした覚えが(笑)

 香川県に入ってまずは腹ごしらえ。食べるのはもちろん

 うどんだ。

 肉入りうどんを注文し、すきな揚げ物をトッピング。

 うん、コシがあって美味しい。
 ちなみに四国では「コシがある」という表現を「エッジが効いている」と言うらしい。
 某ケンミンショーでやっていた。

「いやぁなかなかエッジが効いているねぇ!」

 と、通ぶってみるのも、いとおかし。

 さて、お腹を満たして向かったのは、本日お目当てのお店「麻雀Mah-マウ-」である。(以下マウ)
 香川県高松市にあり、瓦町駅から徒歩一分というロケーション。
 瓦町は普通に繁華街。
 そんな繁華街の中の公民館のような場所に…

 マウはあった。
 階段を登り……

 入口。

 ドアを開けるとかなり広い空間が待っていてくれた。

「いらっしゃいませ!」

HPには「時間帯によってギャル雀になったりオヤジ雀になったり」と書いてあるが、どうやら本日はギャルはいないっぽい。無念……(笑)
 しかし店員さんはみんな若く活気に溢れ、オヤジ雀という感じではなさそう。

 オヤジはオーナーの

 岡本プロだけだ。
 マウはこの岡本プロの色が強く出ているお店だ。
 みんなが楽しめる空間を作るための尽力が、お店の至るところから伝わってくる。
 一番笑ったのがこのポップ。

 肖像権的な話はさておき(笑)
 ツイてねー! とボヤくことは自分も周りも誰も得をしない。そのことをボヤキで有名な監督を使って笑いを織り交ぜながら警告している。

 店内にはこのようなポップがたくさんならんでいて、みんなが楽しむために最低限のルール、マナーを覚えてもらう、というお店の意向だろう。
 スタッフもお客さんも、岡本プロのお店だから……という安心感があってきているのかな、というのを強く感じた。

 さて、待ち席に座りルール説明を受ける。
 マウはオーソドックスな四人打ちのルール。しかし、その中でとても印象的だったのが、

「空ポン、空チーの1000点は供託ではなく、1000点を卓外に出す」

 というもの。
 つまり1000点は誰のモノにもならなくて、以降も99000点でその卓は進むのだ。

 これを聞いてすぐ岡本プロの考えが伝わってきた。
 例えばオーラスに空ポンの1000点で他者の逆転条件が緩和されるのは競技としてよくない……ということだ。
 たしかにその1000点でまくられたらたまったものじゃないし、まくった方も微妙な気分になる。空ポンした人も申し訳なくなるだろう。
 「アガリ放棄」にするのが一番公平だが、フリー雀荘でそれは少し厳しい。

 このルールを見ただけでも岡本プロの苦悩や優しさが見え隠れしないだろうか。
 全国でもあまり聞いたことが無いルールだが、非常に理にかなっており、普及しないかな、と思った。

 次にイベントだ。
 とにかくマウでは多種多様なイベントを行っている。

 ちょっと多すぎて説明しきれないが(笑)面白いな、と思ったのが半荘9回目19回目29回目にトップをとると2000マウプレゼントというもの。
 9回目の半荘を迎えると、「挑戦中!」と書いてある旗がサイドテーブルに立ち、周りからも注目が集まる。自然と力が入ってしまうという寸法だ。
 19回目と29回目(時間的に可能なのかはわからないが)は少しでもいいからマウ額を上げてもらえると、ますますやめられないロジックになりそう……とは思ったが(笑)

 あとは誕生日サービス。
 たまたま誕生日が近かったので申告してみたら、本当にその場で5ゲーム分のマウをくれた。

そしてやたら充実しているのが、

 カップ焼きそばの品揃え。
 岡本プロいわく、「雀荘と言えばやきそばや!」だそうで、各メーカーのいろんなタイプのやきそばが整然と並んでいる。
 謎のこだわりだが、ここまで焼きそばが充実しているお店は他に類を見ないだろう。

 とにかく安くて、面白くて、いろいろやっているが、雀荘としてのマナーやモラルでは厳しい……それがマウという雀荘なのだ。

 電車で1時間かけてこの店にくる、という若者もいた。
 それだけマウが愛されているという事である。

 実際麻雀を打っても、麻雀愛、マウ愛に満ち溢れたお客さんが多かった。

実戦

 そんな中での一局。

 ドラ

開局の序盤、親の手牌。

自然に打か。ターツの数は足りているので形は決まっていると言える。
愚形が多いこの手牌ではを残して好形を求めるのも一つの選択肢だろう。

しかし私はそのを切った。
好形を求めるのと同じ感覚で、私は打点を求めた。
周りでリャンメンができても打点は変わらない。

それなら受けを狭めても……

  ツモ  ドラ

このツモで

   ロン  ドラ

このような最終形を狙った方がよいのではないだろうか。
そこを引いたら誰でも高打点までの一本道になる……その1牌を残すかどうかが大きな違いを生むと感じる。

というように、序盤は高打点が決まってたくさん勝てた。
しかし終盤に入ると長旅の疲れもあり、へろへろになってしまった。

つ、疲れた。。って呟こうとしたけど、

このポスターを見直してやめておいた(笑)

というのは冗談で、終始和気あいあいとした雰囲気の中麻雀を打ち終えることができ、非常に満足した実戦だった。

最後に金曜日限定の麻婆丼を食べ、マウを後にした。

(ピリ辛で美味しかったので毎日やればいいのに!)

評価

刺激度 ★★★
清潔感 ★★★★
サービス★★★★★
やきそばの充実度★★★★★★★

(なお「刺激度」は動くお楽しみチップを元に 新宿ルールを★★★★★、学生でも安心して遊べるルールを★★★、ノーレートルールを★…として表現)

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第十三回:北九州市小倉駅前「M-7(エムセブン)」

リーチ麻雀M-7レポート

福岡に来てよかった。
ゲスト来店(旅打ちはゲストとは少し違うのだが)自体が珍しいこともあり、多くの人が会いに来てくれたし、遠方の麻雀文化に触れる事により麻雀の原点を感じる事ができた。

そんな大団円を迎えようとしている福岡紀行の最後に訪れたのは……

北九州市は小倉である!

振り向くと小倉の街並みがあり、すぐそこには、

下町の情緒を感じさせるような、商店街があった。
小倉駅から徒歩数分といったところだろうか。

目的のお店、M-7はあった。
早速入店しようとした矢先、我が目を疑ってしまった。

35歳以下半額!? さらに女性無料!?
「チャン太」の28歳以下半額でも「ありえないサービス」と表現したのに、その遥か上をいく35歳である。
目一杯広げてくれたレンジにも自分は入らないが(笑)そんなことよりも衝撃が大きかった。

階段を登ると明るい店内が見えてきた。

入ると平日の昼間だというのに、既に複数の卓が立っており、とても賑わっていた。

煤けた壁色、そしてその壁に張られている役満の貼り紙、チョッキをきたベテラン店員さん。決して綺麗とは言えないが、掃除などは行き届いているようで、 それでいて古き良き昭和の雀荘を感じさせるには十分だった。

そういえば、先日亡くなられた小島武夫プロも福岡出身だっけ。
小島プロも、このような活気のあるお店で麻雀を覚えてきたのだろうか。

「いらっしゃい!」

そんなノスタルジックな気分になっていると、威勢のよい店員さんに声を掛けられ、ルール説明の運びとなった。

ルールは普通のアリアリルールのヨンマ。
ウマがちょっと特殊で、

  • 同じ2着でも3万点あるとプラス500pt、ないとマイナス500pt
  • 同様に、3万点ある3着は0、ないとマイナス1000pt
  • ラスは一律マイナス1500pt

と、順位ウマと沈みウマがミックスしたシステムになっていた。
3人沈めてトップをとると大きくなるという沈みウマの醍醐味をそのままに、順位ウマの競技性もあるという絶妙なウマ設定だと思う。

あとはテンパイ連チャン、途中流局アリ、形テンなし……くらいを覚えておけば困る事はなさそう。

最後に「M-7」の目玉となるのがこれである。

の赤が1枚ずつ、そしての金が1枚 ……の計3枚が入っている。
赤はリーチアガリした時にボーナスでゲームチップが300ptもらえ、金は仕掛けても500ptもらえるという特別な牌だ。

福岡では7に特殊牌が入ることは多々あったし、色によって条件が変わるのも珍しくない。
しかし面白いのがここからだ。
ルール表の最後にこう書かれていた。

「この3枚を全部使ってリーチをかけてツモアガった場合は役満になります」

や、役満!? 
2度見してしまった。
正直最初の印象はバランスを壊しすぎではないかと感じていた。
しかし打った後の感想は180°変わっていた。

早速そんな実戦をみていこう。

案内されて座った卓は、両脇に打ち慣れた若い方、対面が商店街の人だろうか私より一回りも上といった常連さんだった。

西家でもらった配牌がこれだ。

 ドラ

さて、何を切るか。
他の店ならいざ知らず、ここ「M-7」では確固たる正解がある。

そうなのだ、赤や金が7という事があり、2と8には明確な優劣が存在する。
ましてや金の存在するペンはそうそう嫌う事はできない。

白をポンした私の2000点のアガリで開幕した。

東2局、親の若者のリーチに対し、対面の常連さんがベチベチと独特な音をさせながら無筋を押していく。
今でこそ戦術本が氾濫し、押し引きに関しても多くのデータが公開されているが、昔はこの常連さんのようにひたすら打つ事によって自分の体でどこまで押していいのかを感じるしかなかった。

体で覚えた事は一生モノだし、何より無機質に並んでいる数字よりもよほど信頼できる。

あれだけ無筋を押していたようにみえた常連さんは、さすがにこれは…・…といった表情で現物を抜いた。
直後に親がツモ、4000オール。

「やっぱこれあたりかー」

常連さんが止めた牌をみせる。

こういう感覚派の打ち手は決して上手いわけではない。
でもこれまでに培ってきた経験からギリギリまで押してくるので、打っていてかなり強く感じるのだ。

――それにしても、このお店のお客さんは楽しそうに打つナ。
この対面さんと両脇の若者、親子くらい年齢は離れているだろうというのに、そういう隔たりを感じさせないような空気があった。
放銃してもアガっても「M-7」は笑顔で溢れかえっていたのだ。
小難しい事を考えていた自分が恥ずかしいくらいだ。

さて、ジリ貧で迎えた南場の親もマンガンを被り、オーラスを迎えて14000点持ちのラス目になっていた。トップは上家の若者で40000点以上持っている。

諦観の面持ちでむかえた配牌がこれだった

 ドラ

……きた!
そうなのだ。このルールで打っていると、赤が2枚きただけで役満がチラつき、ドキドキすることができる。
赤入りの麻雀を打っている皆さんならわかると思うが、赤2枚なら結構な頻度でくる。
その度にドキドキできるのだ。

門前で仕上げないといけないため、と切り飛ばす。

 ドラ

こんなをずっと引っ張っているあたりいびつな牌進行だが(笑)次のツモに心臓が高鳴った。

喉から手が出るほどほしかったである。

なお、最後にをツモってアガリとなっても役満になるルール(最終的に赤赤金になればよい)だったので受けができればよいと思っていた。
それなのに先に金そのものが到着するとは。よし、形はできた。

が1枚見えていたので、を切った。

 ドラ

うおおお! この景色を見よ! 目の前にある材料だけで興奮は高まっていく。
こんなダンラスでもこれだけ盛り上がれるのだから、このルールすげーよ!

しかしここからが長かった。
なかなかテンパイができぬまま、有効牌はバタバタ切られ、そしてトップの若者は役牌をポンし、対面の常連さんからリーチがかかる。

無理かな……と思ったところへ、スッとタテに抜ける盲牌。

 ツモドラ

キタ――(゚∀゚)――!!

は既に2枚打たれているが構わない。
を切って元気よくリーチ宣言した。

が、そのに常連さんからお声がかかった。
メンタンピンドラ1の満貫への放銃。
6000点持ちのラスになり、マイナス2400ptに1500ptの順位ウマを加え3900ptの支払いとなった。

赤が2枚くることなど、半荘に1度はあるだろう。
その度に役満がチラつくのだが、そこからが意外と厳しい。

「3つ使って門前でテンパイしてリーチを打つ」⇒「ツモ上がり」

というさらに複数の条件を満たさないといけないからだ。
ドキドキする頻度の割に、意外と条件が厳しいのだ。
何個も役満を入れるとインフレ化してしまうが、こうやって1つ目玉的な特殊役を入れるだけで、よいスパイスとなって非常に面白いな……と感じた。

さて2半荘目の親番でのこと。

 ツモ ドラ

これが5巡目。
ツモってきたは不要なのだが、問題は対面がリーチをかけていてその一発であることである。

しかし私はあまり深く考えずにを切った。

5巡目のリーチなんてまだまだ通ってないところだらけで何が当たるかわかったものではない。
それならば自分の都合でまっすぐ打つべき。そう打つ事で相手のアガリを最大限阻止できるし、ひいては放銃率も下がるはずなのだ。

次に安目となるがを持ってきてリーチ。
一発でをツモってハネマンの600ptオールとなった。

 ツモ ドラ

このハネマンが効いてトップ。
その後も一進一退あったが、定期的に大きいトップをとり、15半荘ほど打ち終わった頃には大きくプラスになっていた。

結局15半荘も打ったのに、例の役満は一度も出なかった。
自身で3回ほどテンパイしたのだが、やはりなかなかハードルが高い。
出る時は簡単に出るのだとか。

お客さんは入れ替わり何度も変わったが、全員気さくに話しかけてくれ、とても楽しい時間を過ごせた。
福岡の雀荘はどこも特色があって面白く、いい思い出になった。
気持ち良く名古屋に帰る事ができたzeRoさんなのでした。
(今日のわんこ風)

まとめ

「リーチ麻雀M-7」は大手チェーン店のように特別マナーに厳しいわけではない。お客さんの中には、強めの牌の扱いをする人もいた。 お店も古いし、広いわけでもない。

しかしそこにはずーっと麻雀を愛しているお客さんがいて、世話をやいてくれる明るい店員さんがいて、和気あいあいとした会話があり、そしてちょっとだけ刺激的な役満がある、そんな古き良き雀荘だった。
私は本当に昭和の時代にタイムスリップしたような感覚になった。

特に35歳以下の方は半額という破格の料金で麻雀が打てるので、小倉にお越しの際は是非立ち寄ってみてほしいと思う。

評価

刺激度 ★★★★
清潔感 ★★★
サービス★★★(35歳以下は★★★★★)
幻のオールスター役満!★★★★★
満ち溢れる麻雀愛★★★★★★★

(なお「刺激度」は動くお楽しみチップを元に 新宿ルールを★★★★★、学生でも安心して遊べるルールを★★★、ノーレートルールを★…として表現

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第十二回:福岡県大野城市「フォーラム」

※2019年4月に住所移転しています。レポートは移転前時のものです。

私は焦っていた。

天鳳に没頭し、ブログを始めた事により、ゲスト依頼などたくさんの仕事が増えた。
昨年(2017年)には麻雀の戦術本を出すこともできた。そしてすぐに増刷されるほどに売れたのだ。

早いものであれからもうすぐ1年が経とうとしている。
あの時は連日忙しく、必要とされている実感を覚え、とても充実していたように思う。

しかしあれがピークだったようだ。
あと3トップというところまで迫った天鳳位を獲り逃し、ずるずると八段まで降段しその後は長く低迷。プロアマリーグなどの大会に積極的に参加するも結果を出せず、いつからか華々しい舞台から遠ざかっているように感じた。

今ですら齢40を数え、若者からすると距離を置かれる年齢だ。
柔らかく言うといいオッサンである。
それがあと10年経つと50になる。記憶力や瞬発力は大きく衰えてくるだろう。
私には時間がない。実働的にはあと数年。この麻雀界に何を残せるだろうか。

――そんな思いを抱えながらも、この日は「フォーラム」という雀荘を探していた。

おかしい。
JR春日駅より徒歩15分とのことで、その住所に着いたハズなのだが

パチンコ屋しか見当たらない。
何度地図アプリで確認してもこの場所のはずなのだが、周辺をぐるぐる回ってもみつからない。
ん、HPをよくみると「5F」と書いてあるな。もしやと思ってパチンコ屋の中のエレベーターに入ってみる。

あった(笑)
5階で降りると、すぐ隣が入り口だった。
もう少し、外部から存在がわかるようにするとよいと思うのだが。。

気を取り直して入ってみると、

平日にも関わらず縦長の店内にフリーが2卓、セットが1卓たっており、活気を感じる。

「いらっしゃいませー!」

元気のよい女性スタッフが迎えてくれた。初めての旨を告げると、待ち席に案内される。

待ち席では、福岡で定番となった大型モニターから日本プロ麻雀連盟のタイトル戦がライブで流れていた。

何やらこの雀荘は、私のイケメン仲間である滝沢和典プロがプロデュースする店らしい。

……ごめん、イケメンでも仲間でもないわ(笑)
20年前は同じ期待の新人だったはずなのだが、彼はスターダムの道を登りつめ、一方で私はドロップアウトした。あの時のことを自分は今でも鮮明に思い出せるが、滝沢プロが私を覚えているかはかなり怪しいところだ。

多くの大物ゲストが定期的に来店しているようで、所せましとサインが並べてあった。

さて、一通りルール説明を受けたが、オーソドックスなアリアリルールの4人打ちのようだ。
これなら初めてでも戸惑うことなく打てるだろう。

「zeRoさんが来るという事で楽しみにしていました!」

待ち席のお客さんに話しかけられる。
何やら天鳳をやっているということで、天鳳トークに花を咲かす。

そのお客さんと今来たお客さん2人で卓を立てる運びとなった。

「よろしくお願いします!」

元気な挨拶とは裏腹に、手が入らない。
まさに地蔵。先手を取る事ができず、1半荘目はぶら下がりの3着となった。

「フォーラム」では、ゲームが始まる前にこのようなボックスに各自ゲーム代(350円)を入れる仕組みだ。

トップ者がまとめて支払うシステムが全盛の時代で、私はこうやって各々から徴収する昔ながらのシステムを推す。

理由としては、全員分まとめて払うとえらい高いように感じてしまうのが大きい。
また無料ゲーム券や半額ゲーム券などのサービスも、その場で得を実感できるのが良いと感じる。そうそう、フォーラムでは11枚つづりのゲーム券を常時販売しており、これを使う事によって1ゲームオトクに遊べる。新規の方や女性の方はさらに安くこのゲーム券を購入できるようだ。

また、新規様にもれなくゲーム券がもらえるほか、ポイントカードも発行していて、サービスはとても充実している印象だ。

さて、気を取り直して2半荘目に入ったが、なかなか配牌もツモも呼応してくれない。
この、努力がすぐに結果に直結するわけでもなく思うようにいかない麻雀というゲームにおいて、自分はこれから何を残せるのだろうか。

再び心に闇が訪れていた、そんな矢先だった。

ツモられ貧乏で迎えた南1局の事。
私はがむしゃらにホンイツ仕掛けをしていた。

  ドラ

見切り発車で仕掛けてみたはいいものの、字牌は重ねる前に他家からだだ切られ、マンズも同様に被せられていた。

(少しでもいいところを見せたいけど、テンパイすら厳しそうだな……)

そう半ば諦めかけた時だった。上家からが打たれた。
すぐにツモ山に手を伸ばしたが、

(あれ、これって)

体が反応するように声が出ていた。

「チー」

  

何もなかったはずの空間からメンツを作る鳴き。
通常の発想の外にあるこのチーは、ボーっとしているだけではできないし、知識と経験がないと反応できない。

――何かが、代わった気がした。

丁寧に3枚切れているを切る。
次巡、他もほとんど出枯れていた字牌だが、その中の1枚を重ねる事に成功した。

   ツモ

次にを仕入れ、横に曲がっていた対面のを捉える事ができた。

   ロン

間一髪、ギリギリの満貫。
そしてこれがきっかけとなったのか、次局。

四暗刻のツモアガリ。
特に華麗な手筋があったわけでもない。手なりの四暗刻だった。

あれだけ欲しかった結果は、わけのわからないところに潜んでいるものだ。
あのカンチャンで鳴いたもそうだが、心から欲しかったモノは想定外のところにあり、普段はなかなか気付けないのであろう。
結果を出せず、焦っていた自分だが、麻雀の性質上、欲しい時に欲しいモノが手に入るわけではなく、ただひたすら正着打を打とうと努力を続けることによって、ときおり神様がご褒美をくれる……そんなものなのかもしれない。

その後
311121
3連勝もし、終わってみれば大きく勝って「フォーラム」での実戦を終了した。

遠く離れた地で

「一緒に打てて嬉しい」

と言ってくれる人がいるだけで、どれくらい幸せだろうか。
福岡にきてそれを実感した。

華々しく活躍する滝沢プロと違い、一度は諦め「ZERO」からやり直したこの麻雀道。
焦ることなく、やれることからやっていこうではないか。

何かふっきれたような、そんな麻雀だった。

まとめ

「フォーラム」は特徴あるルールや、目をひくようなシステムがあるわけではない。
しかし、低料金でテンパイ連チャンの麻雀がゆったりと遊べること、サービスやゲストイベントが充実していること、スタッフさんが丁寧で明るいことから、とても安心して麻雀を楽しめるお店のように感じた。

パチンコ屋の上にあるのはみつかりにくいが、パチンコ屋の駐車場は使っていいそうなので、車で来るお客さんにとっては非常に便利であろう。
私も地元名古屋では基本的に車で行動しているので、そのへんの気持ちはとてもわかるのだ。

さすが私のイケメン仲間である滝沢プロがプロデュースする店である。

評価

刺激度 ★★★
清潔感 ★★★★
サービス★★★★
イケメン仲間による安心感★★★★★

(なお「刺激度」は動くお楽しみチップを元に 新宿ルールを★★★★★、学生でも安心して遊べるルールを★★★、ノーレートルールを★…として表現

※2019年4月に住所移転しています。レポートは移転前時のものです。

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zeRoの麻雀ひとり旅

第十一回:福岡県福岡県福岡市南区「チャン太 大橋店」

いわゆる「バブル」と言われた二十年前。
学生時代のzeRoが足しげく通った名古屋の雀荘は、地下に存在した。

ポケベルが全盛で、携帯電話が普及しだした昭和の時代だ。
地下ということで電波が入り辛かったのが致命的だし、狭くて暗い階段を下っていくのは怪しさ満点。お店のイメージとしてはマイナスの側面が大きかったと思う。

それでも私は、365日中350日はそのお店で麻雀を打ち込んだし、後にメンバーとなることで仕事や接客を学んだ。

イメージの悪い「地下」も、私としては隠れ家的な雰囲気で好きだった。
あそこにいけば誰かいる。あそこにいけば楽しく麻雀ができる。
麻雀も恋愛も仕事も常識も、すべてそこで覚えた。

――その地下にある雀荘は、私の青春そのものだった。

という背景があり、私にとって「地下」にあるお店は、ワクワク感が5割増しになる。
そう、本日紹介する「チャン太大橋店」は「地下」にあったのだ。

西鉄大橋駅から降りて徒歩1分。
麻雀と書かれた派手な看板があり、すぐにみつかった。

ここも隣にパチンコ屋がある…・・・という福岡雀荘の謎の伝統を守っている。

青春の中の狭くて暗い階段と違い、おしゃれな洋食屋さんにつながっていそうな、明るくてとても入りやすい階段だ。
思い出を噛みしめるように一歩ずつ降りていくと入り口についた。
店内もかなり明るそうだ。

「いらっしゃいませー!」

平日の昼間だというのに、すでに5、6卓立っていて、とても活気がある。

待ち席も広くて、人をダメにしそうな大きなソファーがある。
そしてこれも福岡の伝統か? 大きなモニターがあった。

また、久留米店同様28歳以下が半額と言う「ありえないサービス」をやっている。
ちょっと前ならギリギリ誤魔化せたと思うが、やはり40となった今ブラフをかますのはさすがに苦しいか。
(だからおそらく身分証明いるって)

そしてそして、この「わせりん」君↓にルール説明をしてもらった。

彼は天鳳プレイヤーであり、私と同じで十段を経験しており、とても強い。
それでいて店の中ではムードメーカー的な存在なのか、常に喋っている。
そんな彼の存在のおかげで、完全アウェイの私もかなりリラックスできたと思う。

「久留米店」同様、ここも「マナーに厳しいからこそ楽しく打てる麻雀」がコンセプトになっている。

特に目を引くのは一番下に書いてある

「七・当店は日本一お客様をお待たせしない麻雀店を目指します」

とあることだろう。

フリーに来るお客様は基本的に今すぐ麻雀を打ちたい人が多い。
十分な人数のスタッフで構え、その要望に応える事はシンプルながら重要なことだろう。

さて、ルール説明を受けて、「大橋店」には3つのルールがある事がわかった。
「サンマ」「ヨンマ」は「久留米店」とほぼ同じルールを採用していると思うのだが、ひときわ異彩を放っているのが「大橋店」独自の「RUSH」なるルール。

通常の麻雀とはかなり違うということで尻込みしていたが、わせりん君のススメと、せっかく福岡まで来たということもあり「RUSH」を打つ事にした。

結果的にこれが鬼のように面白かった!

鬼って面白いのか?
自分のあまりの語彙力のなさに辟易としてしまったが、そんなことよりも、今回この「RUSH」の面白さだけはどうしても伝えたいので、わかりやすいようにざっくりと解説していこう。

まず「RUSH」「一局勝負 のサンマ」である。
3人で60分を1クールとし、ひらすらサンマを打つ。
この「60分間の共有」が妙に卓内3人の連帯感を生むのだ。
いや、通常の半荘でも同じことなのだが、時間で区切られると一緒にカラオケボックスに入ったような、そんな謎の感覚を覚えた。

「今から『RUSH』を始めまーす!」

わせりん君の掛け声と共に50分のタイマーが押される。
アガった人が親になるのだが、この50分のタイマーが鳴った後に親が移動したらそこで終了となる。

メンツはわせりん君と常連らしき若者。
始めてであることを告げ、いろいろ教えてくださいと頭を下げる。

最初の親は私だ。
何もわからないまま、手なりで進めていくと、すぐにテンパイした。

(赤) 抜きドラ ドラ

まず、メンゼンでテンパイしたらリーチをかけないとあがれない、というルールだ。
迷わずリーチを打つが、リーチにも3種類ある。

通常のリーチと倍の供託を払うオープンリーチ、ここまではなんとなくわかるが、特殊なのが供託のいらないサービスリーチというやつだ。

サービスリーチでアガると、一発や本場、裏ドラは放棄となる。
どういう時に使うかというと、1人が「流し」など役満(大物手)気配の時に「お安くしとくよ!」という意志とともにサービスリーチを打って差し込んでもらうのだ。

さて、を切って通常のリーチを打ったら、あっさりと若者からが出た。

「RUSH」では通常のハン数による計算とは違い、独自の計算方法を使う。

これを初日で全部網羅するのは不可能だと思うが、リーチ・ピンフなどの頻出する通常の1ハン役はほとんど「2点」だ。

「リーチ・ピンフ・二色・RUSH……」

牌を2枚ずつ集めながら数える。
あとはドラの4枚を足す。
ここまでで12点だ。

そして熱いのがここから。
裏ドラをめくる。
が乗った。

裏ドラが乗ると5点付加され、さらに隣をめくっていく、いわゆる「アリス方式」だ。
アリスはマンガなどで見たことあるが、実際にフリーでやっているのははじめてみた。

次はがめくれて、抜いている北がダブルで乗った。
や赤牌が乗ると10点加点される、つまり2枚を抜いている今回は20点、加算される。

こうやって途切れるまでめくり続け、結局4枚連続で乗った。
12点に35点が加算され47点のアガリになった。

「早速『RUSH』の醍醐味を味わいましたね」

若者が笑顔で47点分のゲームチップを支払いながら言った。
この若者の打ち方が凄かった。

リーチに対してほとんどオリる事なく突っ込んでくるし、追っかけは全部オープンしてきた。
極端だなぁ……と感じたが、これが「RUSH」の1つの答えだとも思った。

なにせツモられても同額を払うのだ。
さきほどの手、ロンアガリだったので47点にしかならなかったが、ツモっていたら2人からもらえていたという事。
また、親だからといって基本的には得点が優遇される事はない。

それならば多少不利な手であっても、押し得となるのは自明の理。
オープンリーチに関しても、供託は倍払うことになるが、アガった時に5点となる上(通常のリーチは2点)ツモ上がり率が高くなる。

ここまででかなり通常の麻雀と違うことがわかったと思うが、難しいだろうか?

人は知らないモノに対して、腰が引けるものだ。
難解な得点表を見たり、今までの常識が通じない麻雀だと思うと、どうしても避けたくなる心理が働く。

しかし、一回でいい。
騙されたと思ってこの「RUSH」を体験してほしい。

通常の麻雀は競技と言うか、なるべく放銃しないよう我慢すべき場面がどうしても多くなるが、「RUSH」はガンガン前に出てアガっただの打っただのワイワイみんなで楽しむ麻雀である。刺激的な一方、あまり腕の差は出づらいと言え「娯楽の原点」がそこにあるように感じた。

また数え方にもコツがあって、「リーチツモ⇒役⇒ドラ⇒裏ドラ⇒アリス」など、数える順番や数えるために集める牌の場所(手牌やアリスとして使いそうなところは残す)など、それらを覚えて流れるように数える事ができると、一種の様式美のような美しさを感じるのだ。
私もその様式美を60分ではモノに出来なかったが、初めての旨を告げればスタッフさんが優しく教えてくれる。

さて、展開の方はというと、ビギナーズラックの私がツイていて、たくさんアガることができた。
若者もカンチャンでもなんでもオープンで追っかけてきて、もちろん返り討ちに合う事もあり何度も放銃していたが、時には奇跡的な太いアガリをモノにしてプラス圏だった。
2人に離される形だったのがわせりん君だ。

しかし後半に入ってわせりん君が親で連チャンしだした。
さきほど、基本的に親に優遇措置はない、と言ったが、少しだけある。
3本場から親だけ積み棒による加点が倍になるのだ。
3本場なら6点、5本場なら10点。
はじめは大したことないな…と思っていたが、これがボディーブローのように効いてくる。特にツモアガリは大きい。

8点のロンアガリからはじまり
16点オール
18点のロン
26点オール
40点オール

アガリを重ね連チャンしていくわせりん君。

これが「RUSH」と呼ばれるゆえん。
積み棒ブーストにより、確変に入ったようにゲームチップをかき集める。
ひとりへこみだったわせりん君は親の5連荘であっという間にプラスに戻してしまった。

そこでタイマーが鳴って試合終了。

私は結果的に少しマイナスになってしまったが、若者も優しく「RUSH」を教えてくれたし、時には一緒にわせりん君をからかったりして、非常に楽しい時間を過ごすことができた。

私は麻雀が好きだ。
これまで20年間ずっとそうだったように、これからもそれは変わらないだろう。

しかしあの青春を過ごした地下の雀荘で、貪るように打った麻雀の面白さはまた別物。
もう二度とあの時の魅力は戻ってこないのかもしれない。
そう思っていた。

しかし、奇しくも同じ地下にあるこの「チャン太大橋店」で、「麻雀の面白さの原点」を垣間見たような気がする。
それくらい衝撃的な魅力を持った「RUSH」の体験であった。

本当にもう一回福岡にいって打ちたいくらい面白かった。
是非本州でも流行って欲しい。

まとめ

全編「RUSH」の紹介となってしまったが(笑)「チャン太大橋店」は「久留米店」同様、サービスと接客がしっかりしていて、活気のあるお店だった。

久留米店同様、次回以降キャッシュバックをゲットできるカードをもらったし、

やっぱり個室もあった。
HPをみてもらうとわかるが、各種イベントを常に行っており、文句のつけようのない雀荘と言えるだろう。

また、久留米店同様、ご新規サービスにかなりの力を入れているようで、

フリー・セット、ともに、新規客には、キャッシュバックを含めて破格のサービスが用意されている。
フリーは最大で8500円相当のプレゼント、セットは最大で40000円相当のプレゼントに加え、ポイントカードのポイントを貯めることで、ゲーム代・卓代無料の激熱サービスまで付いてくる。

チャン太大橋店は、「麻雀の楽しさの原点をみた」、そんなお店だった。

評価

刺激度 ★★★~★★★★
清潔感 ★★★★★
サービス★★★★
わせりん君の騒がしさ★★★★★
RUSHの魅力★★★★★★★★★★★

(なお「刺激度」は動くお楽しみチップを元に 新宿ルールを★★★★★、学生でも安心して遊べるルールを★★★、ノーレートルールを★…として表現