zeRoの麻雀ひとり旅
第十四回:大阪府大阪市中央区 ニュー雀トップ 千日前店
人気麻雀マンガ「天牌」や「むこうぶち」などの作中に、しばしば高級料亭を思わせるような雀荘が描かれることがあるが、実際そんなお店はあるのだろうか?
あった!
前回訪れた「梅田店」の後に向かった雀荘がここ「雀トップ千日前店」である。
なんでも二十年の歴史を誇る老舗で、店の随所からその歴史を感じることができる。
なんば・日本橋の駅で降りて徒歩5分圏内。
千日前の繁華街を入ったところで、すぐみつかった。
夕方前で人はまばらだが、もう少し時間が経つと人でごった返すだろう。
大阪や東京の繁華街は、名古屋のそれより一回り大きいエネルギーを感じるのは私だけだろうか。
歩いている人の人数も違うが、何より人々の歩く姿や顔つき、ひっきりなしに聞こえてくる話し声……が、パワーに満ち溢れているのだ。
さて、そんなパワー溢れる場所にある雀荘である。
仰々しい扉をくぐると、あまりのゴージャスさに驚いてしまった。
待ち席がいくつもあり、その中の1つには
水槽がある。さらに……
カウンターもある。ここなら落ち着いてご飯を食べることができそうだ。
そして店内は
サラリーマンや年配の方を中心にとても賑わっていた。
平均の年齢層は結構高め……か?
「早速いけますよ!」
梅田店で打ってきたことを告げたので、いきなりの卓入りとなった。
ルールは両店で共通しているのである。
特徴をまとめると
- 完先1ハンの関西サンマ
- ツモリ損、1000点加符
- 一発と裏ドラにラッキーポイント
- ドラゴン牌(華牌)4枚あり、1つが赤くてその牌を抜いてアガるとラッキーポイント
- ドラゴン牌を1人で4枚抜くと、ドラが2枚追加でめくれる
ざっくりとだが、こんなところだろうか。
麻雀卓がおいてある部分は一段高くなっており、
「ここからバトルステージですよ」
と言われているようで、いやが上にも緊張感が高まっていく。
卓には社長さんぽい老人と、素性不明の中年男性が待っていた。
卓上に散らばっている点棒を集めながら、新しく入ってくる自分の姿を一瞥するような視線を感じた。
「よろしくおねがいします!」
臆せず元気よく挨拶する。
さて、私はこれまでに多くのお店で打ってきたが、初めて行く雀荘で心がけていることがある。それは
「過度に喋らない」
である。
ルールに慣れるまでは先ほどした挨拶やルールへの質問など、必要最低限のこと以外は口を閉ざすのが吉だ。
いくら「おひとり様歓迎」……といっても、よそ者であることには間違いない。
新参者がいきなりベラベラと話しだしたら、この人は真剣に麻雀を打つ気があるのか?と、疑われてしまうだろう。
特に今回の私のように、卓内で一番若いのであれば、なおさら大人しくしておくのがよい。
難しいことは何にもない。
放銃したら「ハイ」と言って手を伏せ、アガったら申告する。そして、わからないことがあったら遠慮なく聞く。
ごくごく普通に打っていればよいのだ。
「〇〇待ちでした」とか「こっちだったら通っていたのかー」とか「こういう読みでこれを切った」などは、基本控えた方がよい、ということ。
(聞かれたらもちろん答える)
それでは実戦である。開局のこと。
ツモ ドラ
サンマは、四人打ちと比較して、チートイになることが多い。
使っている牌の種類が少ないので当たり前の話だが、それでも頻度としては激増で、体感メンゼンでの三割くらいがチートイじゃないか? とも思えるくらいである。
この手牌も好形が多かったらメンツ手でいいのだが、ピンズとソウズにそれぞれネックがあり、チートイのイーシャンテンは維持しておきたい。
打がいいだろう。
すぐにをポン、を切り、こんな形でアガれた。
ロン 華
華もきたので満貫である。
このように仕掛けてから赤や華がくることは非常に多い。打点は二の次で速度に特化させ手数を増やし、打点は勝手についてくる……というスタイルが関西サンマの基本である。
次局、
ツモ ドラ
速度を重視するとして、ここから何を切るか。
これもメンツ手とチートイの両天秤で打……
とはならない。
ここは自然に打とする。
打の方が受け入れは二枚多い。
しかしこれが罠である。増える受け入れはチートイであり、タンキ待ちである。
その一方で打とした時のツモはリャンメン待ちである。
瞬間の受け入れは打の方が多いが、アガリまでの受け入れは逆転する。の危険度を含めて、打がよいだろう。
すぐにをポンしてまたしてもマンガンのアガり。
こうして最初の半荘は細かいアガリを重ねてトップになった。
梅田店と同じく、棒のようなゲームチップを使って清算する。
店員さんが清算方法を教えてくれる。
清算の時に限らず、店員さんは必ず各卓のそばで見守っていて、一局ごとに空き家(誰も座っていない席)の牌山を前に出したり、やりとりのサポートをしてくれた。
これはかなり安心感がある。
次の半荘、私は仕掛けていた。
華 ツモ ドラ
テンパイなのでこんなツモ切る一手だが、問題は社長さんからのリーチの一発目であることだ。社長さんの捨て牌はソウズがと通っており、ピンズは切られていない。
オリるなら現物はある状況だ。自分の手が「中ドラ2」の4000点ということもありオリた方が良さそうにも感じる。
さて、あなたならこのを切るか?
私は真っ直ぐを切った。
リーチに対する押し引き判断要素はたくさんあるが、その要素の中でも一番大きいのは「好形でテンパイしているかどうか」だ。
イーシャンテンとテンパイは天と地ほどの差がある。またテンパイでも愚形ではめくりあいに勝てず、ツモリ損のこのルールだとよほど打点がない限り損だろう。
逆に好形テンパイなら安くても押していける。
この手もすぐにアガることができた。
その後もトップを重ね、社長さんがラス半をかけ、やめていった。
卓を離れる際、
「兄ちゃん、強いねぇ」
と笑顔で言ってくれた。
これまで互いに必要最低限のことしかやりとりしてなかっただけに、びっくりした。
認められた……とまでは思わないが、ひとりの麻雀打ちとして認識されたことが嬉しかった。
やはり余計なことを話さなくて良かった。
特に関西では勝負に厳しいイメージがあり、自分もその独特の雰囲気は好きだ。
何かを喋るから三味線やマナー違反になるのであり、何も話さなければ問題は起きない。
話すのは場に慣れてから、空気が読めるようになってからでいいと思う。
社長さんの代わりにメンバーが入ったが、私の勢いは止まらなかった。
十回くらい打っただろうか、半分以上私のトップで、気持ち良くラス半をかけた。
さきほどの梅田店に続いての快勝である。
完全復活!
と言いたいところだが、私自身は何も変わっていない。
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」
というのは野村元監督の言葉だが、半荘十回程度では基本的に勝ちも負けも偶然の中の出来事である。
結果に一喜一憂してはいけない。
といいつつ、いつも飲まないお酒をコンビニで買い、ひとりで晩酌したzeRoさんであった(笑)
まとめ
店内の作りだけでなく、メンバーさんの対応ややりとりにも二十年の歴史を感じた。
また、ゴージャスな高級感がありながらも大衆麻雀店のようでもある……という不思議な店である。
麻雀は真剣に打てるし、店内は明るく、そして店員さんも常に見守っていてくれるので安心して麻雀に没頭することができる。
ミナミで二十年間やってきた歴史を体感したいなら是非!
【評価】
刺激度 ★★★★
清潔感 ★★★★
サービス★★★☆
安心感!★★★★★
(なお「刺激度」は動くお楽しみゲームチップを元に、新宿ルールを★★★★★、学生でも安心して遊べるルールを★★★、ノーレートルールを★…として表現)